アイディア

今月下旬から東京国際映画祭というのがあって、昨日ようやくチラシというかパンフレットをもらって眺めていたら、とある映画の紹介文が、2年くらい前にわたしが宇内さんの依頼で書いたピンク映画用の脚本に似ているなと思った。なんで宇内さんからそんな話が来たのかは省略するけれど、もっともこれはとくに独自のアイディアということでもなく、だから、ああ、やっぱり誰でも思いつきそうなことだよね、という程度の感慨しかないのだけど、その脚本はどうなっているのかといえば、そのままだと短かすぎるので大阪にいる田中さんというひとと共同脚色しようということになったはいいが、その後まったく返事が来ないままだ。

まあ、そんなに大発明みたいなアイディアがそうそう思い浮かぶわけもないし、また、どうしても書いておきたいと思うようなことというのは、たとえば次のような光景。正確な時期と見かけた場所は忘れたけれど、年に何度かは、ああ、あれを短編小説かなにか(の一部)にしたい、と思い出す。

それというのは、わたしがどこかの店(コンヴィニかレストランだったか)にいたら入ってきた中年(もっと若かったかも)のカップルで、毎日同じものを食べて同じ布団に寝ていることがありありと分かるような、ある程度以上の長さの共同生活でお互いの相違点を削り取った結果、なんとなく似てきてしまったような、そんなふたり。同じサイフから出した金で買ったに違いない、安っぽい服装(ジャージとかだったかも)で、そのつもりはないのだろうしとくに似たものを着ているわけでもないのにどことなくペアルックに見えてしまう、そんなふたり。

ふたりは店に入ってくるや、入口の近くにある、フリーペーパーのラックをあさり始める。まだR25とかが存在する以前の話で、要するにそういうところにあるのは、読み価値のない(とわたしは思っていた)広告の束みたいなもんである。ふたりはそこにあったあらかた全種類のフリーペーパー類をざっと点検し(何冊か床に広げていたかもしれない)、使えると判断したものだけを持ち去って出て行った。たぶん、クーポーンなんかがついているものだけが選別されたのだろう。

と、書いているうちに、ゼロ年代の前半にときどき行っていた、蕨駅の東口のモスバーガーでの出来事だったような気がしてきたが、確証はないし、そもそも上に書いたことだって、脚色したつもりはないけれど、きっと事実とは微妙に、あるいはだいぶ、違っているだろう。

この話のポイントは(ほんとはそんなものないのだけど)このふたりを見たときにわたしが覚えた、わびしさとさもしさと親密さが一体になったような感情で、それに似たものは、それまで見たことがなかったし、それ以降も、まだない。だからまだ覚えている。ただし、こうして書いてみましたけど、読んだあなたはだからなにって感じですよね。
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by soundofmusic | 2010-10-15 21:48 | 日記 | Comments(0)


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