A
①森山弟(もりやま・おとうと) ②1975年9月24日 (29歳) ③弟 B 2004年はひどく長い冬のような一年でした。浮かれた気分になることもほとんどなく、なんだかいつも何かに追われて切羽詰まってた気がします。あれこれくだらない考え事に時間を取られてやるべきことが手につかなくなり、疲れることが多かったです。中期以降のフィッシュマンズを、楽しむためではなく求めるように聴く機会が多かったことを思うと、あまり調子のよい一年だったとは言えませんね。前回のアンケートにも同じようなことを書いた気がするので、もう少し肩の力を抜いていけたらいいなと思います。2005年のテーマは、王手飛車取り。 そんな中、(これも例年通りですが)周囲の人々にはたくさん助けてもらいました。まわりに生かされている実感をより強く感じ、自分自身の考えがあまり意味を持たなくなった一年でした。個人的には自分が何をどう考えているかはどうでもいいのですが、それだとそんなやつに付き合ってくれる人たちに対して失礼なので、自分のためではなく相対的な自分という存在のためにものを考え、それを伝えていきたいと思いました。 2004年最大の収穫は、三十路を目前にしてようやく「自分は思っていたより頭が悪い」ことを体感的に理解したことです(何を今さらなんですが)。それに気づいてからというもの、できないことやわからないことに対する罪悪感や負い目がなくなって寛容になった気がします。 飛べない鳥もいるってこと((C)アクマ「ピンポン」/96年)、僕らは空を飛べない形、ダラダラ歩く形((C)甲本ヒロト「バームクーヘン」/99年)であることを胸に刻んで、グズグズ歩いてまいります。大切なことはひとつだけです。 C 和33枚(すべてCD) 洋205枚(うちLP11枚) 合計238枚/221,712円 #1枚平均1000円以内という目標達成。1500円のCDを買った日には、そんなに欲しくもない500円のものも無理やり抱き合わせて買うという、日頃からの無意味な精進の成果。 D ・トラヴィス「12メモリーズ」 (03年/スコットランド) 通算4作目にして現段階での彼らの最高作。生々しい陰鬱さと美しさ(←音楽を選ぶ上で個人的にいちばん大事にしている要素。ニック・ドレイク参照)がこれ以上ないバランスで共存していて、名作の誉れ高いセカンドとサード(「ザ・マン・フー」00年/「インヴィジブル・バンド」01年)ですら、この作品の前では安っぽく聴こえてしまう瞬間もありました。 CDをセットし、再生ボタンを押した2秒後にはスコットランドのあの曇り空の下に連れていってくれる一枚。肌に感じるイギリスの空気とか匂いとか陽の光の射し込み方は(当たり前ですが)日本のそれとはまったく違います。今までいろんな国に行った中でもあそこは特別で、イギリス人が天気の話ばかりするのは他にフットボールしか話題がないからではなく、それが否応なく人を惹きつけるからじゃないかと思います。たいがいうんざりするような天気ですが、かわりに奇跡みたいに美しい表情も見せてくれます。空が青いから泣きたくなる(Ⓒポール・マッカートニー「ビコ―ズ」/69年)のはきっとこういう国で育ったからでしょう。晴ればかりでも雨ばかりでも頭おかしくなるでしょうね。 ・キングス・オブ・コンビニエンス「クワイエット・イズ・ザ・ニュー・ラウド」(01年/ノルウェイ) ごきげんなDJイベントPPFNPでその存在を知った、ノルウェイのサイモン&ガーファンクルことキングス・オブ・コンビニエンス。選曲したまさたか兄ちゃんの指摘のとおり、いい感じでゲイっぽい男性2人組ユニット。 音自体は、ノルウェイ出身という地理的な背景のせいか、米国のS&Gというよりもむしろ英国のヘロンなんかに近い雰囲気がしました。ヘロンの英国的な牧歌的雰囲気を北欧の冷たい空気と入れ替えるとこんな感じになるんでしょうか(←適当)。アルバム・タイトルが内容を言いえて妙な、静かにこころに突き刺さるような一枚。ある意味、衝撃的作品。 ・ノラ・ジョーンズ「カム・アウェイ・ウィズ・ミー」(02年/米) 大好きなザ・バンドの面々が参加した小粋なカントリー・ロック・アルバム「フィールズ・ライク・ホーム」(04年)もなかなか渋い内容でしたが、いかんせん忌々しいCCCDなので却下(内容とは一切関係ないですが…)。 音楽誌を読まない上に耳が保守的なので、新しいものにはたいがい疎いです。まぁ古いものだけ聴いていても聴ききれないほど世界は名盤で溢れているので(一生かかっても聴ききれないでしょう。なんて幸福なことだろうと思います)それはそれで全然いいんですが、こうしてまた素晴らしい作品が新たに生まれてくることは大歓迎です。そんなぼくにとって、年末のフィッシュとの出会い(すでに解散してるみたいですが)と並んで、ノラとの出会いはうれしい驚きでした。なによりも、声と音が直接染み込んでくるような感じが素晴らしいと思います。 旬なアーティストなので、どうでもいいような細々したこと(前作に比べて今度のはどこがどうだとか、グラミー何個獲ったとか)を好き勝手に言ってるのをよく目にしましたが、他のアーティストとの比較はもちろんのこと、本人の過去の作品との比較にもあんまり興味がないので(だって2枚以上のレコードを同時に聴くことはできないですから。いつも聴くときは一枚ずつなんです)、今聴いている作品がいいかどうかがぼくにとってはすべてです。レコードを聴くことはとても個人的な作業だと思います。レコード対オレの一騎打ちです(笑) ・ポール・サイモン「ポール・サイモン・ソング・ブック」(65年/米) 奇跡の名盤ついにCD化!米国人による英国フォークの最高峰でしょう。5年前に購入したアナログ盤が擦り切れかかっていたのでたいへん助かりました。これで一生聴けます。感謝。2004年、新品で購入した唯一のCD。 素晴らしい米国音楽を作った英国の音楽家は山ほどいます(ぼくら兄弟が「イギリスのアメリカ」と呼んで愛でている類のもの)が、その逆は今までほとんどお目にかかったことがありません。英国フォーク界の鬼っ子バート・ヤンシュ(サイモンとは、神様デイヴィ・グレアムのアンジーつながり)が憑依したかのような生ギターが紡ぎだす孤独な男の繊細なリリックとメロディに、自然と涙腺も緩みました。静かに降り注ぐ冷たい雨のような一枚。 この後に個人的ポール・サイモン・ブームが訪れ、勢いよく「ポール・サイモン」(72年/ナイスなアノラック・ジャケ)と「ライヴ・ライミン」(74年/ダサいスーツ・ジャケ)を立て続けに購入しましたが、帰宅してみると両方とも5年以上も前に購入済みだったことが判明し、興ざめでした(←別にサイモンは悪くない)。ちなみに上記2作とも内容は素晴らしいです。とくに「ポール・サイモン」の方は文句なしの名盤なので、未聴の人はそこいらのCDを10枚買うより先にあわてて買いましょう。そして、さだまさしに世界一影響を与えたという彼の功績も日本人なら忘れるべきではないでしょう。 ・チリ・ウィリ&ザ・レッド・ホット・ペッパーズ「ボンゴス・オーヴァー・バラム」(74年/イングランド) 12月に生まれて初めて足を踏み入れた稲田堤のディスクユニオンでは、各方面から聞かされていた噂どおり相当ボロい思いをさせていただきました。衝撃的な値付けが平気な顔で行われており、このド名盤がなんと720円!(他にもアレステッド・ディヴェロップメント210円などなど 日本のデフレもここまで進んだかと感慨深い)もはやユニオンというより、その辺のファミコンショップにおまけでついてるCD売り場のでっかい版といった佇まいで非常に好感が持てます。 高校時代からかれこれ10数年パブ・ロックを聴いていますが、今まで聴いた中で最もパブ・ロック的な作品で、一瞬パロディかとさえ思うくらいです。まさにパブ・ロックの鑑、教科書的一枚、非の打ち所ゼロ、「イギリスのアメリカ」ここに極まる!(ほめすぎ?) ジャンプの帝王ルイ・ジョーダンのカヴァーで幕を明け、次々とごきげんなナンバーを連ねて最後まで突っ走る姿は感動的。確実なテクニックと米国音楽への純粋な愛情がひしひしと伝わり、聴く者の頬は緩みっぱなしです。 2005年(以降)の目標は、トロージャン・レコードから出ている、オーセンティック・スカ、ロック・ステディ、アーリー・レゲエ等をコンパイルした3枚組みBOXセットのシリーズを全部買うことです(残りあと37セット…)。 ~トロージャン・ボックス・セット・シリーズ一覧~ E なんにもない、なんにもない、まったくなんにもない…((C)かまやつひろし「やつらの足音のバラード」) このコーナー、もう個人的に廃止いたします。毎回毎回、まったくなんにも思いつきません。思いついたら書きます。 F 頭が固い、腰が重い、優柔不断(結論を出すまでに時間がかかりすぎる/しかも年々悪化の傾向)、そのくせ断定したがる…等々、挙げ始めたらきりがないですが、兄弟で不思議な共通点がある気がすることを思うと一概に自分自身だけの問題でもないように思い始めました。 自分と向き合うことが手放しでよいことだとされているような風潮には、正直言って違和感をおぼえます。突き詰めたところでろくなものが出てきたためしがない。素晴らしい発見があるほどたいしたもんじゃないとも思います。表層的な自分の行動のパターンとか、好き嫌いの傾向だとかは知っておいたほうが生活するうえで便利だとは思いますが、返ってくるものとの対峙を迫られるリスクを冒してまでそれ以上踏み込む意味ってなんだろう、とか思います(設問者の意図と回答がずれてる気もしますが、それはとりあえず無視)。それよりも、より多くのものを見聞きし、より多くの人の話を聞いて対話することの方がおもしろそうな気がします。そもそも他人に不愉快な思いを強いてまで主張したいような立派な考えは持ち合わせていませんし、自分の存在は他者との相対的な位置関係でどんどん変わっていくわけですから。絶対的な自分が存在すると勘違いするほど自惚れないように気をつけたいと思います。 なによりも、こころと身体を健康に保つことの方が大切だと思うので、自然な感じでやっていけたらいいなと思います。その際、自然に生きてるってわかるなんて何て不自然なんだろう((C)よしだたくろう「イメージの詩」/71年)ということばは忘れないでおこうと思います。 *相対主義者は出世しない。(森山政崇)
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| 2005-01-02 08:26
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