木々

d0000025_219892.jpg東京国立近代美術館が、開館60周年記念だからなのか、誕生日当日は入場料無料という企画をやっていて、土曜日、誕生日当日だったので行ってきた。券売所で「本日誕生日なので……」と言いながら免許証見せると、「おめでとうございます!」と言われながら「誕生日無料」とスタンプが押されたチケットを渡され、それをモギリに持っていくとまた「おめでとうございます!」と言われながらチケットをモギられた。開催されているのは、開館60周年記念企画の「美術にぶるっ! ベストセレクション 日本近代美術の100年」。

60年にわたって集められ続けた日本の近現代美術(あと洋モノもちょっと)が、あの建物の1階から4階のフロア全部を使って展示されているのを見ると、わたしの誕生日のおめでたさなぞはどうでもよくなってきて、明治以降の歩みを早回しで見せられているみたいで、なんか日本人すげえがんばったな! と妙にテンションがあがる。

以下、MOMATの国指定重要文化財のページの写真を適宜見ながらお読みいただくとイメージがふくらむと思いますが、最初のほうに展示されていた、原田直次郎の1890(明治23)年作《騎龍観音》、白い衣をまとった観音が龍に乗っているところを描いた油彩。モティーフ自体は日本的と言うか、汎東アジアなものなんだろうけど、実在しないものを、油彩のリアリズムで大マジメに描く……いったいどういうつもりで描いたんだろうとまず思う。龍も観音も、墨や日本の絵の具以外で描かれることはたぶん予想外だったろう。当時は、「サーカスの綱渡りのようだ」と言われて評判が悪かった、とキャプションに書いてあった。これってほとんど日本語のロックの初期のひとたちがしていたのと同じ試行錯誤の産物だったんじゃないかと気付いたら、背筋が伸びました。

かと思うと岸田劉生《道路と土手と塀(切通之写生)》のマッシヴな土の盛り上がりだとか、黒と白とその中間だけの横山大観《生々流転》(全長40メートル!)の後半の中二病的=宇宙的な広がりだとか、以下は重要文化財じゃないけど、和田三造《南風》の胸の筋肉の質感と潮風のにおい、牛自体がほころびて背後の大地が透けて見える福沢一郎の《牛》(外人がゲルニカみたいだなと言ってたけど、こっちのがいいよ)だとか、そして4階と3階のいわゆる和洋の名作を見て2階におりてくると一気に場が前衛めいて、そして1階はまるごと1950年代の実験にあてられていて、加速されて凝縮された空気を存分に浴びて、はじき出されるみたいに会場をあとにすることになる。

んで4階だったかな、向かいの皇居を眺めることのできるガラス張りのテラスがあって、絵を見つつある目で、そこからお堀だとか走っているひとたちだとかに目をやりながら立ち並ぶ木々を見ると、いかに自分がふだん、1本の木の持つ情報量を漫然と受け流しているのかに気付いて、ちょっと愕然とする。今年は美術館通いを15年ぶりくらいに再開させたい、も少しきちんと木を見たい。

誕生日の夜は「黒の試走車」でした。steinさんとkoyoくんがケーキとスパークリング・ワインを差し入れてくれまして、写真は、身の丈を超えた幸福を素直に享受できずに複雑な表情になっているわたしの姿(蜷川実花風に加工済み)です。写真ってほんと怖いな。怖いといえば、この日の帰り際には大塚駅から自宅までの道でマクドナルドのコーヒー無料券(1枚)を拾って、こんないいことばかりあるともうじき死ぬのかもしれない。生前最後のDJになるかもしれないPPFNP Vol.94は、今度の土曜日、12日です。お見逃しなく。
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by soundofmusic | 2013-01-07 21:13 | 日記 | Comments(0)


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