船を建てる

d0000025_17183690.jpg日本から見ると、英国のロック・ファンは全員マーガレット・サッチャーの死に大騒ぎしているように見えて、もちろんそんなこともないんでしょうけど、国全体が炎上しているように見えてしまうあたり、やっぱり物理的に比較的小さな国なんだなあとおもう。

とか言っても実際、わたしが初めてイギリスに行ったのは1992年とかそのへんで、だからサッチャー時代っていうのはまったく知らない。それから10年間くらいは、毎年か2年に1回くらいは遊びに行ってて、いまから振り返れば、せっかくだからその金と時間でほかのいろんなところに行けばよかったなあとも思うけど、まあそれはよしとする。

で、最後に行ったのは9年くらい前で、新しい(もう新しくもない)ポンド硬貨もまだ見たことがない。だから最近の様子はぜんぜん知らないけど、90年代初頭を思い出してみると、お店の大半は日曜日は休みだった。当時の「地球の歩き方」とかを見ると、そのことはちゃんと注意が載ってて、だから日曜日は観光日にしなさいみたいに書いてあったはず。そういうことから察するに、80年代までの英国っていうのはある意味で相当、息苦しいところだったんじゃないかと想像されるわけですけど。

東京新聞に、80年代の英国で、サッチャー批判の曲がたくさん作られたって記事が載ってた。モリッシー、ブロウ・モンキーズ。ただしその記事の中に「シップビルディング」も紹介されていたのには、えっちょっと待ってくれよ、と言いたくなった。しばしばエルヴィス・コステロの作として紹介されるこの曲、作曲は元デフ・スクールのクライヴ・ランガー(ランジャー?)、作詞がコステロ。最初に発表されたのはロバート・ワイアットがうたっているヴァージョン。わたしはコステロのもので知った。スウェードやグレアム・コクソンもカヴァーしているけど、どちらもわりとそのまんまです。スウェード、ひさしぶりに聴いたけどあいからわず気持ち悪りぃ。

この曲は1982年のフォークランド紛争(紛争?)に触発されて書かれたものだけど、歌詞の中には固有名詞は出てこない。サッチャーもフォークランドも、造船所のある港町の名前も。ただしもちろんこれを聴いたイギリス人が具体的な名前を思い浮かべることはあるだろう。

それにしてもこの曲の1行目の歌詞、Is it worth it のふたつの it が何なのかは難題だなーとあらためて。すぐあとに続くラインは A new winter coat and shoes for the wife / And a bicycle on the boy's birthday だから、英語のテストだったらそういうふうに答えておけばいいのだろうけど、何が何に値するのかは、あまりにも多義的で、茫漠としている。1982年の紛争(紛争?)は、3月に始まって6月に終わったのに歌詞の中には「クリスマスまでには戻ってくるよ」との一節があるのは、ここからの引用でしょう。というか、一種の慣用表現なのかもしれない。
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by soundofmusic | 2013-04-12 17:19 | 日記 | Comments(0)


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