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8人(くらい)の女たち

この夏に出たキャロル・キングの新作2枚組ライヴ盤『ザ・リヴィング・ルーム・トゥアー』、みなさん、お聴きになったでしょうか。

聴いてない? そんなん、出てたのも知らない? それもそうでしょう。失礼な話、2005年において、現在のキャロル・キングを熱心にフォローしているひとがそんなに多いとも思えない。

しかし、これねぇ、良いですよ。カーネギーホールのライヴ盤、聴いてませんが、たぶんこっちの新作のほうが良いと思う。と断定するのは差し控えたいけれども、おそらく、みなさんが、現在のキャロル・キングのライヴ盤、と聞いて期待するものより、10倍、100倍のものを与えてくれることだけは間違いない。

聴いていて、ふとビョークを思い出す瞬間があったりして、やっぱり、才能のほとばしる女はいくつかのパターンに収斂されるのかしらん、といかにも凡人なことを考えたりもした。ディスク1のラストのメドレーの前に、これらの曲はみんな、“my first husband, my fisrt lyricist, and still a dear friend” のジェリー・ゴフィンと一緒に書いた、と紹介するくだりも、なんだか、いいんだな。

例によって、このアルバムのことはボンゴさんから教えてもらった。毎度毎度、たいへんありがたいこと。なにかお返しをしなくてはいけない。ボンゴさんは、いやオレも中川五郎経由で知ったのだ、と言っていたけれど。せめてのもアレとして、ここでこうしてこの名盤を紹介する次第。みなさん、聴いてね。

以下は、ボンゴ先生によるこのアルバム評からの抜粋。

『ナチュラル・ウーマン』=キャロル・キングとは、こんなにも美しい女性なのだ。女性の美しさとは何か、世の男たちはそろそろ気がつかねばならない時が来ている。

* * *

ここ1週間くらいの間に身辺に起こったこと、そして、起こりつつあること。これらによって気持ちがたかぶっているのが感じられる。CDはほぼ99%が段ボール箱に入ってしまって、手元にひと山だけ残っている状態。

たまたま残っていたキャロル・キングの『ライムズ&リーズンズ』や、こちらはまだ箱に入れずにおいたユーミンの『ミスリム』なんかを聴きつつ、江藤淳の「一族再会」(講談社文芸文庫)を読む。

内容が良いのはもちろんとして、聴くものも読むものも、どれもこれもが体にすんなり染み込んでくるみたいな、秋。

江藤淳が、国際ペンクラブの出した反核声明に反対したときの逸話が解説に載っていて、心を打たれる。いわく、その声明はペン憲章に反する政治的行動であって、平和維持には核による抑止力が不可欠であるという意見も、核の有無は文学者の営為に何の関係もないとする立場も、すべて切り捨てるものだ、と。

文学者は本質的には“おひとりさま”であるべきなのかもしれない。でも、そうできているひとは、とても少ない。

* * *

その他の(今、手の届くところにいる)女たち。

☆美空ひばり『ジャズ&スタンダード

タイトルどおり。(たぶんSPからの)盤起こしの「上海」にしても、エリントンの「A列車」にしても、日本語がいつのまにか英語になる(あるいはその逆)スムースさに舌を巻く。誰でも言うことだけど、英語ができないとはとても思えない。楽譜が読めないけどスキャットができる、というのは分かる。しかし、英語ができないでどうやって英語でフェイクするのだ。どこかに元ネタがあるのかしらん。

☆ザ・ディティ・バップス『ザ・ディティ・バップス

たしかプラネッツのブログで見かけて、アマゾンで試聴して、カナダかどっかから取り寄せて、届いたの聴いて、こりゃたひらさんが喜ぶだろうって「えっへん」って持っていったら、タワーかどっかで買ったみたいで、もう持ってた。ということで、ひそかなヒット作なのかもしれない。なごみます。

☆ペギー・リー『ミンク・ジャズ

いわゆる60年代前半(ブリティッシュ・インヴェイジョン以前)の米・キャピトルの音、というと、こんなイメージ。人生は変わらないだろうけど、安定感があって気持ちいいレコード。

* * *

あと数日は、ここにあげたものを含む、1ダースくらいのCDだけをとっかえひっかえ聴かざるを得ない生活。もちろん、それが原因で死ぬということはない。

ここんとこいちばん刺激を受けた音楽は、昨日、新文芸坐で見た、大島渚「東京占戈争戦後秘話」の、武満徹によるスコア。ガボール・サボみたいなぺらぺらのギター(弾いているのは誰だろう)が心地よいラーガ~ジャズ~ロック、意外にもメロウなエレピ、そして、いかにもタケミツな、逆上する弦。

木曜日に引っ越しなので、暗闇の中で現実逃避している場合ではない。部屋の片づけをしなくてはね。

(森山)
by soundofmusic | 2005-10-17 20:07 | 日記


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