無人駅

d0000025_14384680.jpg横浜市民ギャラリーあざみ野で開催中の、「リッスン・トゥ・ザ・ダクソフォン」展に行ってきました。そもそもダクソフォンというのは、名前から察せられるとおり楽器なんだけど、まったくなんの予備知識もなく会場に着くと、入ってすぐ、だだっ広くて真っ暗な空間に誘導される。とはいってもときおりあかりが明滅するので完全に真っ暗ではなくて、その空間にはたぶん17個のスピーカーが設置されていて、そこからはダクソフォンだけで作られた音が聞こえてくる。内橋和久によるサウンド・インスタレーション「ダクソフォンの森」。

ダクソフォンの音というのはなんと言えばいいのか、クイーカ(ゴン太くん)が野太くなったみたいだったり、ヘタクソなヴァイオリンみたいなひっかき系の音だったりとヴァラエティに富んでいて、これってどんな形の/種類の楽器なのか見当もつかないな、と思ったのですが、もっとも、ふだん楽器の音を聴いて形を思い浮かべることができるのは、単にすでにそれを知っているからだよな、とも思った。

暗い中、四方八方から響いてくる音を聴いていると、森の中で獣たちの声におびえる太古の人類みたいな気分になったりもするべきなんだろうけど、個人的には、自然音を人工的に模写する行為にあまり興味が持てなくて、とはいえ、たしか全26分くらいのそれのうち、5分くらいしか聴いてなかったから、通しで聴いていたらまた印象は違ってきたかもしれない。隣の部屋で展示を見ている最中、とても同じ楽器の音とは思えない爆音が響いてきたりもしていたから。

で、展示のほうに進むと、ダクソフォンの仕組みの解説なんかがあって、細長い木片を弓でひっかいて音を出す楽器だとわかる。その際、別の木の塊で木片のいろんな場所を押さえることによって音色や音程の調整が可能になる。細長い木片の根元には、振動を拾って増幅するためのサウンドボックスがついている。とまあ、字で説明されてもよく分からないと思うので、詳細は各自調べてみてほしいんだけど、タングと呼ばれる細長い木片の形によって、出てくる音がまったく違うみたい。おそらく、楽譜にしたがって演奏するために、という意味ではコントロールが相当難しい楽器だろうけど、音の出るおもちゃとしたらこんなに楽しいものもそうそうないだろうな。

壁一面に、数百枚のタングが整然と並んでいて、ひとつひとつの木の色の風合いの違いと見た目の美しさに文字通り目を奪われてしまう。この楽器の発明者であるハンス・ライヒェルは、ギタリストであると同時に著名なデザイナーでもあったらしく、たくさんのタングの、いわゆる楽器楽器した美とはまた別の種類の美しさは、ライヒェルのデザイナーとしての部分がにじみでてるんだろうなと思った。

あさっての15日(日)までやっていて、無料なので、近所のひとは行ってみるといいです。いや、わざわざ遠くから電車に乗っていってもいいんだけど。渋谷から田園都市線で30分くらいなのに、思いのほか深い山に分け入っていくし、電車の窓を開けていたら線路際の木から猿が飛び込んできた。あざみ野は無人駅で、市民ギャラリーまでの道すがらでは山羊が草を食んでいたりする。のどかでいいところでした。
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by soundofmusic | 2014-06-13 14:40 | 日記 | Comments(0)


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