20年殺し

d0000025_85325100.jpg近年いろんなひとがやってるアルバムまるごと再現ライヴというやつ、とくに魅力も意義も必然性も感じたことがなかったんだけど、8月だかにビルボードでやってたカーネーション『ア・ビューティフル・デイ』の発売20周年記念ライヴ、あまりに評判がよく、また、やってるほうにも手応えがあったみたいでさっそく追加公演が決まり、おおそうか、だったら行ってみよう、と思って、行ってきました(於:下北沢ガーデン、9月27日)。

現在は脱退したギター鳥羽修、ドラムス矢部浩志に加えて、当時のライヴの常連ゲスト・プレイヤーであった鈴木桃子とズーコ(コーラス)、ロベルト小山(サックス、フルート、パーカッション)がひさびさに顔を揃えて、やはり脱退したキーボードの棚谷祐一がいない以外は、ほぼ95年のメンツが再現された感じ。

たぶん92年ごろから90年代いっぱいくらいまでは、カーネーションでの東京でのワンマンはほとんど、とは言わなくても半分以上は行っていたはずなので、思い出そうとすればいろいろ思い出せることはある。ちなみに彼らのライヴは2004年でなんとなく通うのをやめて、次に見たが2011年の面影ラッキーホールとの対バン、そこからまた間が空いて今回、という参加履歴。

たとえば(たしか)クアトロで一度だけ聴いた、マーヴィン・ゲイ&タミー・テレル「Ain't Nothing Like the Real Thing(恋はまぼろし)」のカヴァー。デュエット相手は誰だったろうか? その日は曲名がよく聞き取れなくて、「リアル・スウィング」に聞こえた。あとで、当時バイトしていたレコード屋で、正しい曲名を調べたんだった。いまでも大好きなこの曲、このときに初めて知った。

たとえばミュージック・マガジンに(たしか)宇都宮美穂が書いた『ア・ビューティフル・デイ』のレヴューに直枝が腹を立てて、ライヴのMCで「ミュージック・マガジンを糾弾せよ!」みたいにあおってたこととか。宇都宮美穂の名前は出してなかったはずだけど。立ち読みしたその文章自体は、さすがに覚えてない。FMウケそうなつるつるした音、みたいな表現があったんじゃないかな。だとしたらそれははずれてはいない気がする。と当時も思った記憶がある。

たとえば(たしか)リキッドルーム(もちろんまだ歌舞伎町にあったころ)でのライヴ。1曲目(違ったかも)の「エド・リヴァー」での直枝のジャズマスター(だったかな)のやたらとヤクザな感じのカッティングのイントロがかっこよかったこと。

たとえば(たしか)『ア・ビューティフル・デイ』を買った翌日かあるいは数日後に、それを聴きながら千葉県のほうにバイトに行ってどこか船橋あたりの駅からバスに乗ったこと。このアルバムが出た95年っていうと、春に大学みたいなものを卒業したものの就職せず武蔵境のアパートに住み続けて、1か月くらいは仕送りしてもらって毎日本を読んでいて、そのままだと気が狂いそうになるので週に2回くらい小金井公園のプールに泳ぎに行ってたわけなんだけど、夏ごろはどうしていたかあまりよく覚えてない。夏にはたしか2回、千葉県のプールにバイトしに行った。みんなが水着でいるプールサイドを服を着たまま歩き回って、プールの利用者にアンケートをとる仕事。1日目は行ったら雨になってひとがぜんぜんいなくて、だもんで別の日にもう一度出直したのを覚えている。この、アルバム買った翌日かあるいは数日後が、プールのバイトのどちらかの日だったのか(たぶんそうだろう)、あるいはまったく関係なく別の用事で千葉に行った日だったのか(千葉にそうそう用事はないだろう)、もしくはそれらのどれでもなくて完全に捏造された記憶なのか、いまとなっては確認できない。

再現ライヴですけど、95年当時の自分のこととかライヴの雰囲気とかを思い出すことは意外なほどなくて、それよりも20年殺しというか20年ぶっ生き返しというか、ここ1、2年、自分がソウル・ミュージックをある程度聴くようになって、当時から親しんでいたカーネーションの曲ががらりと違って響いてくる現象ね、それを生で確認できたのがよかった。もちろん当時も、少しはソウルを買っていたんだけど、その時点では意味がよくわからず、したがって身にもついていなくて、でもそうした昔買ったCDが、最近になってようやく役に立ったりもしている現象は確実にある。だからCDは可能な限り処分しないほうがいいんです。

『ア・ビューティフル・デイ』の全曲をアルバムそのままの曲順で演奏したあとは、ボーナス・トラックとして当時のレパートリーを披露。オリジナル・アルバム未収録の「パーティ」はシングルのカップリング曲だったっけ? まさにいまの自分のモードにぴったりのソウル・ナンバーで、気持ちよく踊ったあとに、大田譲が「この曲はたいへんなんだよ。難しいベース・ラインを書いてくるひとがいるから……」とコボしていたので、ああそういうところまで直枝が指定するのか、と軽くびっくりしたり。

ほぼ唯一、イントロですぐに思い出せなかった曲が「ごきげんいかが工場長」で、これとか、もちろん「夜の煙突」とかの、直枝が20代に書いた曲の爆発する才気+ブルーカラーっぽさっていうのは、鉄工場の息子としては胸に迫るものが、相当に、ありました。こっちも20年分トシくったぶん、向こうも現役バンドとして日々更新/行進を続けてるわけで、たぶん95年の実際のライヴ音源を聴いたら、今回聴いたものとは相当違う音なんだろうけど、だからこそ、こういう企画は、ほんとに、たまーにでいいんだよ。10年に1回くらいで。(と思ったら、『天国と地獄』も20周年の再現ライヴやってたんだったね。興味なかったからスルーしてたわ)
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by soundofmusic | 2015-09-30 08:59 | 日記 | Comments(0)


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