ラジオ

d0000025_0264254.jpgいゆわるクラシックを聴くことはあまりないんだけど、現代音楽はなんとなく生で聴いておきたいと思っていて、年に1、2回行く。行くとたいていは大量のチラシの束をもらうことになって、その中でひとつくらいは行きたいものがある。ということで、夏にハインツ・ホリガーを聴きに行ったときにもらったチラシで仕入れた情報をもとに、弦楽四重奏団であるフラックス・クァルテットを聴きに横浜まで行ってきました

このひとたちのことは知らなかったものの、曲目がジョン・ケージ、一柳慧、黛敏郎、コンロン・ナンカロウ、ジョン・アダムズ、エリオット・カーター、ジョン・ゾーンという現代音楽の幕の内弁当みたいなものだったので、なら行ってみるかと。

全曲の感想は省きますが、冒頭のケージ「スピーチ」。これは5台のラジオとナレーターによる曲?で、開演の定刻5分前に、壇上の机のところに一柳慧が(とはいっても自己紹介するわけではないので、わからないひとにはわからない)登場、それとほぼ同時に、客席後方からやや大きな話し声が聞こえてくる。それはラジオで、客席内の通路をラジオを持った男たち(どうもクァルテットのメンバーだったような……)がうろうろ移動しながら音を発する。ラジオから流れるのはニュースだったり、語りの番組だったり、音楽だったり(「ウィ・ウィル・ロック・ユー」がかかってた)。

そのあいだ、一柳慧(このひと、オノ・ヨーコの最初の旦那さんだったよね、そういえば)は新聞だか雑誌だかの抜粋の、時事的な記事を、ときどき読む。でもその声はラジオにかき消されてよく聞こえなかったりする。というのが15分くらい続く、曲(?)。

最後のジョン・ゾーン「デッドマン」は、1分くらいの短い曲13個からなっていて、曲の時間の大半は、弦楽器からノイズのような音を出させている。たとえばエレキ・ギターをギャギャギャギャって弾いたりとか、あるいはフリー・ジャズのサックスのめちゃくちゃなブロウを想像してもらえればいいかと。で、そういうノイズのあいまに、4人のうちひとりがふとブルーズ的な瞬間をさしはさんできたりする。

あるいは、4人が弓を空中で振ってブンブンという音を出したり。あるいはこれはどういう奏法なのか、擬音で言うならギシギシ、ミシミシという音だったり、あるいは接触の悪いアンプのつまみを回したときのようなガリガリという音だとかを、楽器から出させたりする。

というところで、このコンサートの最初と最後がつながる。これは、ラジオのチューニングなんじゃないかと。つまみをいじっているうちに、ノイズのあいだからメロディがくっきりと立ち上がってくる。我が家ではフィジカルなラジオ受信機はまだまだ現役で、ほぼ毎日聴いてるけど、つまみを回して空中から電波を拾うなんて動作はそのうちなんのことやら誰にもわからなくなるはずで、そうなるとジョン・ゾーンのこの曲の印象もまた違ってくるのかもしれない。

クァルテットのヴァイオリニスト、トム・チウは、ひとりだけ群を抜いて動きが激しくて、ぴんと伸ばした体全体を斜めに傾けて、いまにも宇宙へ発射されそうな勢いのまま演奏したりする。かと思えば、自分が弾いていないときには目をつむり、腰を前に突き出して座るもので、椅子から落ちそうに見える。台湾系のひとであるらしく、そのルックスもあいまって、「椅子から落ちそうでハラハラしながら見ているとなかなか落ちない酔っぱらったサラリーマン、の物真似をしている芸人」みたいに見えるのでした。

ところでこのコンサートの会場の神奈川県民ホールは山下公園のすぐ近くにある。せっかくなので30年ぶりにそのあたりを散歩できたらよかったんだけど、家を出るのが遅くなってしまい、横浜駅西口店と関内の2軒のディスクユニオンを回っていたら時間がなくなった。そのかわりコンサート後は中華街まで足を延ばし、適当な店で中華料理を食べ、エッグタルトをおみやげに買って帰った。
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by soundofmusic | 2015-10-20 00:30 | 日記 | Comments(0)


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