2015年のグッド音楽

d0000025_12411480.jpg遅ればせながら、みなさまあけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

さっそくですが2015年の音楽グッド12+αです。具体的な数はともかくとして、2015年の入手枚数は、引っ越しでごたごた&反省した2014年と比べて、やっぱり増えてしまいました。特筆すべきは全体の2割以上がLPだったこと。つまり枚数的にも割合的にも、いままででおそらくいちばんアナログを買った年だろうと思われ(いや、ゼロ年代前半はもっと買ってたかも?)、かといって世界的な潮流であるらしい(ほんとに?)アナログ回帰などとはとくに連動はしてないはずですが、メジャー・レーベルから出ていた名の知れたひとの作品であっても、いまだにCDになってないものは山ほどあるんだと気付いたことは大きな収穫(であり、散財の要因)でした。

ジャンルとしては、ソウルとラテンを意識の中心に置いた年でした。とはいえ、なにか特定のものだけをべったり聴く、という性質ではないので、実際の割合としては中心、というほどではないかもしれません。しかしユニオンに行ったときもロックやジャズの棚はあまり見なくなりました。そうだな、2015年をあとから振り返るとしたら、ソウル元年ではなくてジャズ離れ元年になるのかも。

そもそも、ジャズを聴き出して比較的早い段階で、これは自分にとっての黒人音楽への入口になるだろうとの予感はあったのですが(いや、このまとめ方は歴史をかっこよく改竄してるかな?)、ジャズから入って、ラテンとソウルへ流れていくのは結果的にはよいことでした。たぶんこのまま一生ブルースとは無縁と思われ、それもどうかと思いますが、そのへんはかわりに?ゴスペルを聴くことで補っていくつもりです。

そして、ソウルを聴くことで、死ぬほど嫌いだったフュージョンが好きに……はなりませんが、歴史の必然性みたいなものはある程度、理解できたと思います。

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前置きはこのくらいにして、グッド・アルバムをひとまず12枚。*はLP、ほかはCDです。並びは買った日付順。

◇:間宮貴子『ラブ・トリップ』(1982)
●:The Renaissance『Bacharach Baroque』(1969/*)
▽:寺尾紗穂『楕円の夢』(2015)
☆:Peter Dean『Four or Five Times』(1974/*)
+:Charlie Christian/Dizzy Gillespie『After Hours』(rec.1941)
■:Rasa『Everything You See is Me』(1978/*)
@:Marvin Gaye『Here, My Dear』(1978)
≠:ハルカリ『音樂ノススメ』(2004)
∵:Sammy Davis Jr.『Something for Everyone』(1970/*)
§:goat『リズム&サウンド』(2015)
>:井手健介と母船『井手健介と母船』(2015)
#:The Temprees『Love Maze』(1973)

コメント。

◇:低血圧。アンニュイ。カフェ・オレ。肩パットのジャケット。ソバージュ。電電公社。適当にキーワードを並べてみましたが、そんな時代の和製シティ・ポップの最高峰の1枚。CDはタワレコ限定再発のため、なかなかディスクユニオンで中古で出回らず、結局怒りの新品購入。しかしさんざん聴きまくって元はとったので悔いはありません。なお、帯などの売り文句に、「都会のいい女」的イメージも膨らむ……とありますが、これがいつも「都合のいい女」に見えてしまいます。たしかに不倫とかしてそうなキャラでもあり、そんな感じの曲もあるんですが、本人は音楽業界から離れたあと、離婚弁護士になったとかならないとか。

●:ブリティッシュのプログレのひとたちではなく、米国のプロデューサー、スナッフ・ギャレットが手がけた(たぶん)企画ものグループ。この手のアルバムは1曲か2曲だけよくてあとは普通かもしくはしょーもない、という場合がしばしばありますが、これは高速で疾走する冒頭のダバダバ・コーラス「アイル・ネヴァー・フォール・イン・ラヴ・アゲイン」からしてタダモノではないぞと予感させます。タイトルのとおり、バカラック曲だけを集めてきてるので安心してお聴きいただけます。たぶん未CD化ですが、検索すると日本のレコ屋のサイトがいくつか出てくるので何曲か試聴はできます。

▽:『御身』(2007)が話題になったころに試聴してみて、あまりピンと来なかったので気にせずにいたところ、たしか2012年から、ジョー長岡が毎年年末にこのひとのワンマン・ライヴを企画するようになり、それに顔を出しつつ、CDもちょくちょく買い集めていきました。この最新作はたぶんいままででいちばん力が抜けていてなおかつヴァラエティに富んでいて、それを聴く自分も彼女の音楽になじんできまして、主観的にも客観的にも最高傑作ということでよいかと思います。他者を信頼して自分の身をゆだねるような感じが随所に聴き取れます。森は生きているとのコラボ「リアルラブにはまだ」を聴いて、「森は生きているはこれからシティ・ポップ化する! 来年くらいにはみんな刈り上げて原色のシャツ着てるはず!」と中野さんに予言したんですが、それが実現する前に解散しちゃいましたね。

☆:カーリー・サイモンの伯父さんのひと。洒脱な高齢者のレコードはわりと好物ですが、ここまで軽妙なのはなかなかない気がします。そのサイモンとのデュエットがあったり、サイモンの当時の夫君であるジェイムズ・テイラーのカヴァーがあったりと、姪の七光り? なレコード。ちなみにわたしが買ったのは日本盤LPで、へえーほぼリアル・タイムで日本盤なんて出てたんだ、とちょっと驚いたところ、ここにもおんなじようなことが書いてある。

+:20世紀ポピュラー音楽史/録音史に残る名盤。お恥ずかしながら初めて聴きました。ちょうど20年前にジャズを聴き始めたとき、勉強用に買ったスイングジャーナル別冊の名盤ガイド(1980年代後半に出版されたもの)に、歴史的価値は高いが音質がよくない、と書いてあったので二の足を踏んでいたのです。いざ買ってみると、充分すぎるほどにいい音でした。もともとの録音がポータブル・レコーダーによるものなので音質が劇的によくなることはありえないのは大前提として、なにをもって「いい音」とするかの問いも込みで聴かれるべき1枚。当時20代半ばのクリスチャン、ディズ、そしてモンクらがおおむね同じ方向を向きつつ、しかし決してそろってはいない足並みで新しい音楽へと歩みを進めている様子が生々しく残されているのだから、これ以上なにを望みましょうぞ。ビバップの誕生に立ち会った助産師たちの青春の記録。

■:たいそうな口を利けるほど詳しくないのでアレですが、欧米だと宗教モノのレコードってけっこうあって、そして必ずしも、そういう形容から想像されるような堅苦しい音楽ばかりではないので、結果的に日本人がレア・グルーヴ的に聴いていたりします。日本のレコ屋だと宗教ソフト・ロックとか宗教SSWとか、なんか微妙に乱暴かつ失礼なジャンル名で売られていたりして、そのうちうっかりして宗教ゴスペルとか言い出す店があるんじゃないかと睨んでますが、そんなことはともかく、これは宗教AORの名盤。1曲目のイントロのシンセ、軽くシンコペイションするリズムで、うむ間違いない、と確信。あとで聞いたところによると、ユージーン・マクダニエルズの息子がやってたバンドだそうです。わたしが買ったのはアナログですが、日本盤CDが出てます。

@:20年くらい前に、三鷹の板橋くんの家に遊びに行ったときか、板橋くんがうちに来たときだかに聴かせてもらったことがあるような……。そのときは『離婚伝説』ぅ~? なにその邦題! みたいにしか反応できなかった気がしますが(さすがに「ホワッツ・ゴーイン・オン」くらいは知ってたはず)、別れた奥さんへの慰謝料のために作られたアルバムだと思って聴くと、際立ったリード曲を持たず、アルバム通して地味に一貫したムードが持続する構成も、地獄のごとくえんえんと続く結婚生活の隠喩のように感じられて味わい深いです(適当)。名盤ってことでよいかと。

≠:訪阪7回目くらいにして初めて行ったアメリカ村の中古盤店キングコングで、彼女らの1作目『ハルカリベーコン』と2作目『音樂ノススメ』を各100円で買ったのが、2015年のレコ買い生活のピーク(しょぼい)のひとつでした。どちらもよく聴きまして、しかし「フワフワ・ブランニュー」「マーチングマーチ」「ストロベリーチップス」と名曲3連発を含むこちらのほうに軍配を上げましょう。家族のコメントや谷川俊太郎の朗読をfeat.してるあたりも、2015年にわりと考えていた「ドキュメンタリーとしてのレコード」問題ともリンクしてきます。歌詞の小ネタはすでにいくつかわからなくなりつつあるので、あと10年くらいしたら詳細な脚注つきで再発するとよいのでは。それまではブックオフの250円棚で探してみてください。彼女らのような存在はいまでも存在しうるだろうかと今朝、ふと考えてみました。たぶんアイドルと呼ばれる分野の裾野が広がったので、そこらへんに呑み込まれるんだろうなあと思いました。

∵:モータウンに1枚だけ残したアルバム。誰かが思いつけばすぐにでもCDにできるんでしょうが、なぜかたぶんまだCDになってません。耳なじみの曲、堂々とした歌唱。「スピニング・ホウィール」「フォー・ワンス・イン・マイ・ライフ」あたりは、これ以上は無理ってくらいダンサブルに盛り上げます。もちろんそれはファンキーなリズムとソウルフルなブラスに支えられてのことで、歌とバンドががっぷり四つに組んだ丁々発止のやり取り、かっこいいです。トーキング・ブルーズ風の「イン・ザ・ゲットー」なんかは、金のかかったギル・スコット=ヘロンっぽくもある。

§:2015年、自分がいちばん驚いた音楽はこれかもしれない。詳しくは購入時に書いたこちらをお読みいただきたいですが、曲の一部でこういうことをやるとか、あるいは1曲だけこの手のサウンドにするとかだったらまだ話はわかるけど、とにかくバンドそのものをこの音楽をする行為に捧げてしまうというのはちょっと意味がわからなくて感動します。前作『ニュー・ゲームズ』も買いましたが、その時点ですでにまったく同じ音ができあがってました。ってことはもう、このひとたちのCDはわざわざ毎回買わなくてもいいってことか。

>:いわゆるうたもの部門(ってほどたくさんエントリーしてるわけでもないけど)はこちらがウィナーです。10年くらいたったら、このピアノやドラムスの演奏や録音を「ああー、2015年ごろの東京だね」と思うだろうか、なんてことも想像しながら聴きました。もういいかげんいい齢なので(わたしが)、みんなで元気に大きな音を出したいだけのバンドごっこだとか、威張ってるような音楽は聴くのがしんどくて、だもんでこのアルバムの控えめなたたずまいはなにかと心地よかった。よくよく聴いていくと、かなり白熱してたりドヤ顔っぽい瞬間も見えるんだけど、全体として不快感がないのはきっと人徳なんでしょうね。と書いてみて、単に歌い方の印象でそう感じるだけかもしれないとも思いましたが。「ロシアの兵隊さん」はヴェルヴェット・アンダーグラウンドの3枚目に入ってそうな曲で、しかしそれに気付くのにしばらく時間がかかった。あーこういうのあるわ……なんだっけ……と。そういうことには1分くらいですぐに思い当たりたい。

#:ディスクユニオンでの店内の自分の動きってのもあらためて言語化してみると妙なもので、棚の前をゆっくり横移動しながら、CDの背表紙を見るだけで、「持ってるから見なくていいやつ」「持ってるけどつい見ちゃうやつ」「持ってないけどなんとなくスルーしていいやつ」なんかを無意識のうちに判断してるわけですよ。そんな中で「あっこれ探してるやつだ」ってのがあればもちろん引っ張り出しますが、それ以外にも「知らないけどなんとなく気になって取り出して見るやつ」ってのがあって、売ってるCDなんてほとんど全部知らないやつなわけで、なにがどうなって脳から指先に「それ引き抜くべき」って指令が飛ぶのか謎すぎます。とはいえこのCDについては、背表紙でスタックス系だってわかって、名前聞いたことないひとたちだったのが決め手だったのかな。そしたら値札のコメントに南部スウィート・ソウルとか書いてあって、スウィート・ソウルとか甘茶ソウルと呼ばれるものが自分の好みだとここ1、2年でわかっていたもんですから、おっと思ってその場で検索して、よさそうだったので買いました。そのときには気付いてませんでしたが、カーペンターズ「レット・ミー・ビー・ザ・ワン」(ニコルズ=ウィリアムズ作)とか、ポール・サイモン「サムシング・ソー・ライト」といったナイス・カヴァーを含んでいました。この手の音楽の、とくにメロウ系の曲は、歌でも演奏でも、どこかがでしゃばっていたり欠けていたりするととたんに全体のバランスが崩れていびつになるものですが、このひとたちは名人の作った茶碗というか、優れた工芸品のような調和がすばらしかったです。

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次にグッド・ソング部門。何度も何度も繰り返し聴いた曲を、ぱっと思い出せるところで。

・安室奈美恵「ザ・ゴールデン・タッチ」
・テンテンコ「Good bye, Good girl」
・Esther Phillips「Alone Again (Naturally)」

もはや「ちゃん付け」は失礼かと思われる安室ちゃんのは、わたしにとって20年弱ぶりの安室ちゃんのCD購入となったアルバム『_genic』より。やはりこの曲が際立って聞こえました。PVも楽しい。安室ちゃん、お互いこの20年いろいろあったし、たまにはこうして肩を並べて飲みたいよね(面識なし)。

テンテンコはお騒がせアイドル・グループ(という程度の認識だった)BiSの元メンバー。映画「劇場版 BiSキャノンボール2014」を見て彼女たちに興味を持ち、その流れでこの曲を知りました。80年代っぽい曲調およびPVがクセになった。(まだ買ってません、YouTubeで視聴)

エスター・フィリップスのは、言わずと知れたギルバート・オサリヴァンの激シブ・ファンクなカヴァー。どうでもいいけど、たぶんオリジナルを好きになったのは「めぞん一刻」で使われてたのを聴いて、だったはず。

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最後にグッド・パフォーマンス部門。

・Gregory Porter「Painted on Canvas」におけるチップ・クロフォード(pf)のソロ

アルバム『Be Good』の1曲目。普通にポーターの歌の伴奏をしていたのが、ソロが始まるとひとが変わったように想像力を開花させるので思わず身を乗り出してしまいます。かといって過剰な自己主張という感じでもなく、これから始まるポーターの音楽世界とはこういうものなんだぜ、とリスナーの耳と頭に叩き込むような演奏。クロフォードのことは存じ上げなかったのであわてて調べましたところ、気鋭の新進系かと思ったらかなりの高齢者でびっくり。
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by soundofmusic | 2016-01-12 12:33 | 日記 | Comments(0)


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