アフロ・ヘアーで盆踊り

d0000025_1955342.jpg代官山の晴れたら空に豆まいての10周年イヴェント「あいおい」を見ました。出演は寺尾紗穂、長谷川健一、折坂悠太。

トップは折坂悠太。まずしょっぱなのギターの音の良さにびっくり。PAがいいのか、楽器そのものがいいのか、弾き方なのか。ギターってこんなに気持ちいい音が出る楽器だったっけ? ギター演奏の形容として、つま弾く、という言葉があるけれど、弦を持ち上げてバチンと元の位置に戻しているような図(琵琶、ウード系のイメージ)が思い浮かぶ音。

ヴォーカル・スタイルがまたユニークで。野太い音の塊をなるべく減衰させずに遠くまで届かせるための発声というか。そこに独自のねじりが加わり、はっきりとした音なのに歌詞が聞き取りづらい。耳をそばだてて聞いていると、現代短歌、現代俳句にも通じる世界のような。歌詞カードを読んでみたい。

ギターは英国フォークに通じる音を出していて、声もスコットランドかアイルランドの谷間あたりで響いていそうな感じ。強い風にも負けず、山の向こうまで流れていくうた。1曲、無伴奏でうたっていて、これもア・カペラなんてしゃれたもんじゃなく、たとえばイワン・マッコールの労働歌というか、あるいは、パンとウィスキーを買うためになけなしのギターも質に入れてしまった奴がそれでも歌っている、そんな風情。

そして同時に、日本語の民謡のようにも聞こえるところがおもしろいと思った。日本語だと民謡とフォークはなぜかまったく別のものとしてとらえられることが比較的多いと思うけど、彼の歌はその両方の意味でのfolkだなと感じた。

セット・チェンジのあいだにジョー長岡さんが隣の席に座ってきた。「いまの聴いた?」「いいねぇ」。そんな会話を交わす。

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次は長谷川健一。結果的に、今日の3人の中だとこのひとがいちばん正統派に聞こえてしまう。このひとの歌を生で聴くのは通算3回目。前回、何年か前に聴いたとき、このひとのならではのあの節回しって、意外と民謡とか小唄に近い世界なんじゃないか、と感じたことを思い出す。リズムはドドンパとかああいうのが合いそう。

新曲が多めだったようだけど、最後のほうにやった「空の色」、単に歌っている回数が多いからなのかどうか、それにしても堂々たる名曲の貫録。

長谷川健一を初めて聴いたのは、2007年12月15日。ミニ・アルバムが2枚当時に出た、そのレコ発のライヴ。そのときの感想。2007年のこの日は、長谷川健一(+船戸博史のベース)と、ジョー長岡のツーマンだった。長谷川の歌には、たしかに、なんかすげぇのが京都から来たな、みたいなインパクトがあったんだけど、その日の感触としては、ジョーさんもぜんぜん負けてなかったんだよ。それから10年近くたって、ここまで音楽家としてのキャリアの差が開くとは思わなかったけど……(というオチ)。

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寺尾紗穂、アフロ・ヘアーになってなかった。衣装も黒っぽい地味なドレスだったかな。しかし見かけに騙されてはいけない。「いか採り舟の歌」のピアノの強烈なスウィング、ドキドキさせられた。かと思うと、「指」にはフランス映画の香りが漂う。

ラストは折坂、長谷川を加えた3人で、折坂の「きゅびずむ」を歌う。わたしの近くにいたお客さんが、ステージ上の3人を見て小さな声で「家族みたい」と言っていた。3人はお互い全員、この日が初対面だったそうだけど、折坂いわく、いとこに会ったみたいに気軽に話ができたそう。わたしには両親と息子(折坂)のように見えたな。あ、もちろん、そんなに歳は離れてないけども。

それにしても、3人の声質の合わないこと合わないこと。これほどごつごつした、違和感の塊みたいなセッションにはひさしぶりに出会った気がする。

たぶんこの日のライヴはお店の企画だったと思うんだけど、テーマはおそらく民謡だろう。いま売ってるミュージック・マガジンでも、「ニッポンの新しいローカル・ミュージック」なる特集が組まれている(未読)。そこに載ってるらしいアラゲホンジは何年か前に見てぶっ飛んだ。民謡クルセイダーズもなるべく近いうちに見てみたい。来年か再来年あたり、民謡はブレイクするんじゃないかと思うんですよね。

それともいくらか関係して、東南アジアの盆踊りシーンのことが最近気になっている。数万人規模が集まって、民謡とかJポップとかで踊るらしく、和太鼓と現地の打楽器のコラボなんかもあるとか。来年あたり、クアラ・ルンプールかジャカルタに見に行ってみたいな。

ところで、ちょっと前、ライヴのチケットの転売の話題が盛り上がってましたね。あまり興味が持てずにいたんですが、というのは、チケット取れないやつを無理して定価以上で買って行くよりも、家でCD聴いてたほうがいいんじゃないのーって自分としては思うんですよね。とくに東京の場合、普通にチケット買えるライヴ、いろいろあるじゃないですか。「あいおい」も、自分はあわてて予約しましたけど、結局当日券でも入れたみたいでしたからね。

とか書くと、そんな、誰でもいいわけじゃなくて、わたしは何万円出してもこれが見たいんだ、という反論をしてくるひとがいるかもしれない。そういうひとは音楽に関するお金の使い方がわたしとは違うんだなあと思うだけです。
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by soundofmusic | 2016-10-21 19:56 | 日記 | Comments(0)


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