ウルトラ黛ニューミュージック

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ユーロスペースで実相寺昭雄の特集上映があって、「ウルトラセブン」の「狙われた街」「第四惑星の悪夢」「円盤が来た」を見た。お客さん20人くらいのうち、たぶん自分以外は全員、わかって見に来ているひとだったと思うので、「狙われた街」の非常に有名な場面で、あっこれはこの話だったのか! と内心びっくりしてたのも、必然的に、わたしだけだったと思う。

とはいえ今回の本題はそれではなく、主題歌の話。格調高い金管のイントロに続いて、セブンセブンセブン……と歌われ、♪はるかな星が 郷里だ♪と歌詞が始まるところ、よく聴くとウォーキング・ベースのフレーズがなかなかかっこいい。かなり音量は小さいものの、ドラムスもけっこうハデなプレイをしているみたい。どういうひとが演奏してるとか、情報あるんだろうか(調べてない)。

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そんなこんなで翌日、発売になったばかりの、黛敏郎『日活ジャズセレクション』を聴く。タイトルの通り、黛敏郎が日活映画のために書いた大量の音楽の中から、ジャズっぽいものを集めたコンピ。なんの気なしに買ったけど、いざ聴いてみたら、あっこれこそが自分が欲しかったCDだわ、と気付いた。

そもそも日本映画では、作品単体のサントラをLPとして出して、売ろう、という発想は、欧米と比べるとずいぶんあとになってからでないと発生してこなくて、本格化したのは1970年代に入ってからではないかな(ちゃんと調べてない)。主題歌のシングルは昔からありましたけどね。黛の場合、『東京オリンピック』のLPはあって、ただしこのLPも、米盤と、たしかイタリア盤は確実に存在するけど、日本盤はあったんだっけかな?

ということでこのCDに入ってる音楽、ものによってはサントラCDが出てるのもあるし、既発のコンピに入ってる曲もあるけど、かなりの部分が初音盤化なはず。折に触れて現代音楽だったり、ラテンだったりの要素が混入してきてて、考えてみたらこうした、昔の日本映画を見てて耳に入ってくるマンボやチャチャチャって、最初は、レトロでキッチュな昭和の文化として、いわばかっこ付きで良いと思ってたけど、今回のこのCDを聴いたら、そうした気持ちはなくなってて、わりと自然に楽しめるようになっていた。

それで考えるのは、たとえばジョージ・ラッセルなんかについてどう思ってたんだろうなってこと。

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と、この話はここで終わるはずだったところ、ちょっと書き留めておきたい話題を見かけたので書いておきます。ライト・イン・ジ・アティックという再発レーベルがあって、近年、いい仕事をなさってますが、そこから、『Even A Tree Can Shed Tears』というコンピが10月(だいぶ先ですが……)に出る。

タイトル聞いてすぐピンとくるひとがどれくらいいるのか、わたしはわかんなかったけど、この一節は西岡たかし「満員の木」の歌詞から採られたもので、つまりこのコンピは、1969年から1973年の日本のロックとフォークの、欧米向けの初の本格的な紹介なのだそう。こちらの商品説明のページ、説明は英語だけど全曲試聴もできるので見てみてください。解説読むと、GSやカレッジフォークへの対抗馬として勃興してきた「New Music」を集めたものだとある。日本語には「ニューミュージック」という言葉がすでにあるからわたしたちは多少混乱しちゃうけど。

全曲試聴しながら、このコンピで初めて日本の音楽に接するリスナーのことを想像してみた。どこかの街には、Kenji Endoにニック・ドレイクを聴き取り、Sachiko Kanenobuにジョニ・ミッチェルを重ねてみる男の子がいるだろう。Dogenzakaという耳慣れない地名に、カーナビー・ストリートやヘイト・アシュベリーと共通するものがあるらしいと知り、そしてそれがあのShibuyaの一部だと気付いて驚く女の子もいるかもしれない。

丁寧に編集された1枚のコンピが、個人的にも、もっと大きなリスナー集団にとっても、すごく重大な意味を持つことがままあるわけで、もしかするとこの1枚の真価は、5年後、10年後にじわじわと明らかになってくるのかもしれないですね。

さらに! こちらを読むと、ライト・イン・ジ・アティックは本盤を皮切りに、日本の音楽アーカイヴ・シリーズをスタートさせるとある。『Pacific Breeze: Japanese City Pop, AOR & Boogie 1975-1985』や、『Kankyo Ongaku: Japanese Ambient, Environmental & New Age Music 1980-1990』などが予定されているそうで、とくに前者は楽しみでならない。これでようやく、シティ・ポップやAORが正統な和製英語として、英語圏のリスナーの辞書に登録されることになるんだろうか(「Obi」以来?)。

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もっとも、個々人のレヴェルではすでにその動きはだいぶ前から始まっているようで、岸野雄一は、昔はどこにでも300円であったユーミン『ミスリム』やヤマタツ『スペイシー』は、台湾や韓国のDJがみんな買っていってしまうのでほんとに見かけなくなった、と書いていた。

その岸野氏が紹介してた台湾のアーティスト、雀斑(Freckles)の『不標準情人(Imperfect Lover)』を買ってみましたところ、実にすばらしかった。失敗しない生き方をバックに土岐麻子が歌ったようなといえばいいか、かわいさのツボと、高い(しかしイヤミでない)音楽性を兼ね備えたアルバム。ここ数年の日本のシティ・ポップと呼ばれる周辺のもの、噂を耳にしてよさそうな気がするものはぽつぽつとは試聴してるつもりでいるものの、積極的に買ったりしそうなものはいまのところほぼゼロなんですが、これはぽーんと超えてきた感があります。試聴してみてください

とはいえ、欲しくなったとして、これ、タワレコのワールド・コーナーとかで買えるのかな。アジアものの専門店に行けば買えそうだし、そのうち日本盤が出そうな気もしますけど。ご希望の方はわたしが次回(たぶん来年だと思うけど)台湾に行ったときに買ってきますので、お申し付けくださいませね。(追記:iTunesだと買えるみたいです)
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by soundofmusic | 2017-04-22 15:00 | 日記 | Comments(0)


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