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わたしと違うひと

あんまり誰も知らないみたいで、18日(日)に行ったら拍子抜けするほどのひとの少なさだったのだけど、劇場公開が見送られてDVD発売されるジョン・ウォーターズの「ア・ダーティ・シェイム」、渋谷のシアターN(元のユーロスペースの場所)で、無料上映中です。1日1回、21時20分から。23日(金)まで。

なにしろタダなので時間のあるひとは行くよろし。ただし言うまでもなく下品で、最初から最後まで全部下ネタなので、行く前に内容を確認しておくこと。劇場ホームページハピネットピクチャーズのホームページ参照。

舞台はいつものごとくメリーランド州ボルティモア。セックス・カルトとセックス嫌い集団との戦いを描いている映画なので、ひとによっては気分を害するかもしれない。ただし劣情を催すとか、ポルノグラフィであるとかということはないです。むしろ、多様性賛美の映画だと思いました。それも相当に行き過ぎの。

劇中、リベラルっぽい夫婦が出てきて、「ボルティモアにはいろんなひとたちがいていいよね!」とか最初は余裕をカマしていたのに、このセックス・ウォーズでご近所が大混乱になると、「やっぱりワシントンDCに帰る!」って尻尾を巻いて逃げ出してしまう。当然、これはギャグのひとつとして扱われているんだけど、人間、自分と異質なものを本当に受け入れることができるのか? お前にはその覚悟はあるのか? と胸倉をつかまれるような気がしました。

なにマジレスしてんだよジョン・ウォーターズの映画に、と笑われるかもしれないけれど、この作品は、現代アメリカに蔓延している(のであろう)ピューリタン的な不寛容に対するJWからの挑戦状だとも思う。文字通りさまざまな「“性”癖」を持つセックス・カルトの面々が12使徒にたとえられているのを、どの程度マジに受け取ればいいのかはわたしにはいまいち分からないけれど、こないだ、シネマヴェーラでチャールス・ロートンの「狩人の夜」を見て、やはりキリスト教の基礎的知識くらいは持ってたほうがいいよなあと再確認はしたのであり、まさか「狩人の夜」とJWで同じことを思うなんて、想像だにしなかったわけだけど。

堅物の主人公(トレイシー・ウルマン、ノリノリ)の娘は、冗談みたいな巨乳を持つセックス狂なのだけど、それが頭を打って急に真面目になり、ピューリタン的なワンピース姿(巨乳はそのままで)になるあたりなんか、その落差にクラクラする。キッチュとはこれのことを言うのだと思った。(もちろん、実際に巨乳なピューリタンの方もいらっしゃると思うが、それはまた別の話なのでここでは触れない)

なんだか、どういうカメラワークであるとかそういう話を全然していないけれど、そういう映画的な話は逆にこの作品に失礼な気もする……。ともあれ、今日を含めてチャンスはあと3回。お見逃しなく!

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このあいだ「滝山コミューン」を読んだときも思ったことだけど、わたしは、人間がみんなおんなじように行動したら気持ち悪いと思っていて、それと同時に、ひとりひとりが違っていたら本当にたいへんだろうな、とも思う。要するにそれは、夜中、開いているはずのコンヴィニに行ったら「今日はダルいから閉めます」って貼り紙がしてあってシャッターが下りている、そういう状態、効率の悪さのことだ。

まあ、わたしは、夜中になにか特定のものが食べたくなってコンヴィニにかけこむ、なんてことはほぼ絶対にないので、それはかまわない。それでも、みんなが自己主張せずに働くことによって均質のサーヴィスが提供されているこの社会構造の恩恵は充分に受けているので、「そんなのかまわないから、もっと自分の思うままに行動しろよ」なんて思わない。みなさん機械のように働いてください。よろしくどうぞ。

それと関連する話。高度経済成長期だとかバブル期だとかに、みんな残業をいとわず働いたりして、もちろんいまでも残業しまくってるひとはいっぱいいるだろうけど、で、そんなのダサいよって思うのは勝手なんだけど、たとえば、親がガムシャラに働いて稼いだ金で大学出た息子や娘が「うちの父ちゃん仕事人間、ダセー」とか言い出したらそれはちょっと違うんじゃないかと。

あれ、あんまり関係ない話になった。
by soundofmusic | 2008-05-21 11:07 | 日記


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