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動かない蛸

またしても間が空きましたが、PPFNP、明日開催です。ゲストはムサシノカチューシャナイトのichiさんと、「黒の試走車」でセンセーショナルなデビューを飾ったssotaさん。ふたりともすばらしい曲をおかけなさるので、ぜひともお越しください。詳細はこちら

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今週は妙な映画を見たなあ。妙というか、こちらの考えている「映画とはこういうものだ」という枠を外してくれる作品。

まずはソ連のアレキサンドル・ドヴジェンコの2本、「ズヴェニゴーラ」と「武器庫(アルセナール)」。どちらもサイレントなのだけど、後年復元されたときにオケがついた。

これが2本とも、ストーリーはほぼ理解不能で、なおかつ、ところどころに異様なインパクトを持つ画面があり、そして、あとからつけられた音楽は不穏だったり勇壮だったりするものの、とにかく音量がバカでかい。結果として、VJを見せられているような3時間(2本で)でした。

はい次。エドワード・D・ウッド・Jr.「グレンとグレンダ」。最低映画監督として知られるエド・ウッドのデビュー作。つまんねーとか最低とか破綻してるとか、いくらでもツッコミどころはあるんだけど、いい映画という以外の言葉が出てこない。それも、珍獣を愛でるような意味でじゃないよ。たしかにエド・ウッドは頭がおかしいかもしれないが、これを冷笑したり、駄作と斬って捨てたり、バカ映画とか言ってみたりする奴は、心がおかしい!

普通の劇映画のような構成もありつつ、ハイウェイを流れる車の列の映像に対話の音声を重ねるだけで済ませてしまう安直な部分もあり、これも意外にもVJっぽい。この映画、もともとは性転換(した人間)の映画を作るつもりだったらしいのだが、たまたま監督自身に女装癖があったせいで(どういう「たまたま」だよ)、監督が自己の性癖を擁護するような映画になってしまった。ちなみに、主演も変名を使ったウッド自身である。

と聞くと、ひとりよがりな映画のような気がするけれど、それは違う。いままで誰もやっていなかったことを、「たまたま」、やってしまっただけなのだ。必要以上に自分を少数派の側に置きたがるのはわたしの欠点で、それは分かっているとはいえ、ここでのエド・ウッドにはほんと、涙が出るね。

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ところでわたしはエド・ウッドの映画を初めて見た。ティム・バートンの「エド・ウッド」で動かない蛸と必死で格闘するベラ・ルゴシに半泣きになってから10数年、ようやくエド・ウッドの映画に出会えて感無量でした。動かないはずのものを必死で動かすというのは、もしかすると映画の比喩だったのか、といま思う。

今週はティム・バートンの新作「スウィーニー・トッド」も見たんだった。暗くて、湿っていて、ゴキブリやネズミがうろうろしているロンドンの雰囲気が超いい味。朝ごはんたらふく食べた直後に見たもので、戻しそうになったよ。見ているだけでペストになりそうな映画……。
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by soundofmusic | 2008-05-30 16:32 | 日記 | Comments(0)

わたしと違うひと

あんまり誰も知らないみたいで、18日(日)に行ったら拍子抜けするほどのひとの少なさだったのだけど、劇場公開が見送られてDVD発売されるジョン・ウォーターズの「ア・ダーティ・シェイム」、渋谷のシアターN(元のユーロスペースの場所)で、無料上映中です。1日1回、21時20分から。23日(金)まで。

なにしろタダなので時間のあるひとは行くよろし。ただし言うまでもなく下品で、最初から最後まで全部下ネタなので、行く前に内容を確認しておくこと。劇場ホームページハピネットピクチャーズのホームページ参照。

舞台はいつものごとくメリーランド州ボルティモア。セックス・カルトとセックス嫌い集団との戦いを描いている映画なので、ひとによっては気分を害するかもしれない。ただし劣情を催すとか、ポルノグラフィであるとかということはないです。むしろ、多様性賛美の映画だと思いました。それも相当に行き過ぎの。

劇中、リベラルっぽい夫婦が出てきて、「ボルティモアにはいろんなひとたちがいていいよね!」とか最初は余裕をカマしていたのに、このセックス・ウォーズでご近所が大混乱になると、「やっぱりワシントンDCに帰る!」って尻尾を巻いて逃げ出してしまう。当然、これはギャグのひとつとして扱われているんだけど、人間、自分と異質なものを本当に受け入れることができるのか? お前にはその覚悟はあるのか? と胸倉をつかまれるような気がしました。

なにマジレスしてんだよジョン・ウォーターズの映画に、と笑われるかもしれないけれど、この作品は、現代アメリカに蔓延している(のであろう)ピューリタン的な不寛容に対するJWからの挑戦状だとも思う。文字通りさまざまな「“性”癖」を持つセックス・カルトの面々が12使徒にたとえられているのを、どの程度マジに受け取ればいいのかはわたしにはいまいち分からないけれど、こないだ、シネマヴェーラでチャールス・ロートンの「狩人の夜」を見て、やはりキリスト教の基礎的知識くらいは持ってたほうがいいよなあと再確認はしたのであり、まさか「狩人の夜」とJWで同じことを思うなんて、想像だにしなかったわけだけど。

堅物の主人公(トレイシー・ウルマン、ノリノリ)の娘は、冗談みたいな巨乳を持つセックス狂なのだけど、それが頭を打って急に真面目になり、ピューリタン的なワンピース姿(巨乳はそのままで)になるあたりなんか、その落差にクラクラする。キッチュとはこれのことを言うのだと思った。(もちろん、実際に巨乳なピューリタンの方もいらっしゃると思うが、それはまた別の話なのでここでは触れない)

なんだか、どういうカメラワークであるとかそういう話を全然していないけれど、そういう映画的な話は逆にこの作品に失礼な気もする……。ともあれ、今日を含めてチャンスはあと3回。お見逃しなく!

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このあいだ「滝山コミューン」を読んだときも思ったことだけど、わたしは、人間がみんなおんなじように行動したら気持ち悪いと思っていて、それと同時に、ひとりひとりが違っていたら本当にたいへんだろうな、とも思う。要するにそれは、夜中、開いているはずのコンヴィニに行ったら「今日はダルいから閉めます」って貼り紙がしてあってシャッターが下りている、そういう状態、効率の悪さのことだ。

まあ、わたしは、夜中になにか特定のものが食べたくなってコンヴィニにかけこむ、なんてことはほぼ絶対にないので、それはかまわない。それでも、みんなが自己主張せずに働くことによって均質のサーヴィスが提供されているこの社会構造の恩恵は充分に受けているので、「そんなのかまわないから、もっと自分の思うままに行動しろよ」なんて思わない。みなさん機械のように働いてください。よろしくどうぞ。

それと関連する話。高度経済成長期だとかバブル期だとかに、みんな残業をいとわず働いたりして、もちろんいまでも残業しまくってるひとはいっぱいいるだろうけど、で、そんなのダサいよって思うのは勝手なんだけど、たとえば、親がガムシャラに働いて稼いだ金で大学出た息子や娘が「うちの父ちゃん仕事人間、ダセー」とか言い出したらそれはちょっと違うんじゃないかと。

あれ、あんまり関係ない話になった。
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by soundofmusic | 2008-05-21 11:07 | 日記 | Comments(0)

人間関係

いやなことがあった日のことは割といつまでもしつこく覚えていて、日記をつけなくて済むのはいやなことのおかげかもしれない、と思ったりもするけれど、こうした考え方は誰にでも通用するものではないだろう。

……などと書いて、心配するひとがもしいると悪いので断わっておくと、わたしの書くものが全部そうであるように、これは引用です。ただ、どうしてそういう引用をする気になったかについてはれっきとした個人的な事情があるのであって、それは、原武史「滝山コミューン一九七四」(講談社)を読んだから。

東久留米、西武池袋線と西武新宿線の中間あたりの、最寄り駅のない場所に巨大な滝山団地はあって、その団地の子供たちが通う滝山七小で1974年ごろにおこなわれていた異常な教育方針によるある種の共同体を、著者は「滝山コミューン」と呼ぶ。

その実体は、班分けによる児童の「自主的な活動」(その実、過酷な競争)に象徴される、民主主義の成れの果ての全体主義だった。キーワードは「みんなの○○」ね。急速に巨大化し、生活環境も家族構成も収入もほぼ均質な団地の子供ばかりで構成されていた小学校ならではの現象だと思うが、ていうか待てよ、これに似たことって、おれが通っていたS川第一小学校とS川中学校でも起こっていたじゃん! そして、「エスカワ中学校」ってなんだかギャル雑誌みたいじゃん!

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原武史が歴史家になるにあたっては、このときの経験が大きく影響しているらしい。わたしにとっても事情は似ていて、たとえ自発的に楽しんでいるように見えてもとてもロック・フェスなどに行く気にならないのは、あらゆる集団は最終的には集団そのものの維持のためにしか行動しなくなることをいろんなところで学んできたからです。「民主的な軍隊」が存在し得ないことはみなさんお分かりかと思うけど、ほかの集団でも本質的には同じこと。

といいつつ、わたしも平然と会社勤めをしているわけですが、なにかおかしいぞと思ったときに誰かにそれを話して解決できない規模の集団には、あんまり属したくないなあ。なんだかんだでそれは難しいとしても、少なくとも、個人であることよりも集団の一員であることのほうに無自覚に喜びを感じているひととは、あまり付き合いたくない。

ただ、この本のすごいのは、原少年が「滝山コミューン」を嫌悪しつつも、みんなで合唱して生理的な快感についとらわれてしまうあたりの経験もきちんと書かれていること。

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うまく感想がまとまりませんが、こういう集団の力学は別に特定の時代の特定の場所でだけ起こりうるわけではなくて、わたしたちが日々経験していることだろうと思う。もしあなたがいままで、えーわたしがいた学校なりサークルなり会社なりはみんな和気藹々としていて楽しかったよー、と主張するのであれば、それは単にあなたが何らかの意味での加害者だったからに過ぎない。

……と、ほとんど被害妄想的ないいがかりをつけたくなってしまう。ま、わたしとて、学校がそんなに死ぬほどイヤだったかというと、そうでもないのですがね。ちょうど「空中キャンプ」に書かれていたこちらの記事とか、QBBの「中学生日記」とかね。バカバカしくて楽しい瞬間も、ありますね、ときどき。

いずれにしても、「森山兄研究」に携わっているひとたちは、「滝山コミューン一九七四」、必読です。
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by soundofmusic | 2008-05-16 06:20 | 日記 | Comments(0)

ドラマがやりたかった

d0000025_1411153.jpgかねてからの予告どおり、5月3日(土)、イメージフォーラム・フェスティバル2008に行ってきました。徳本直之+鎌田綾「しあわせ」を見に、です。会場のパークタワーホールはいわゆる劇場ではなくだだっぴろい空間で、そこに、会議に使う椅子が並べられ、前方のスクリーンに映写、という感じでした。なお、この写真は終了後のひとがはけつつある途中に撮ったもので、上映時はもっとにぎわっていました。

以前会ったときには徳本監督からカメラワークのことを聞き、当日、会場では、彼がこの映画祭にスタッフとして参加したことも映写を手がけたこともあり、今回も出品者としてだけではなく、上映用の素材作成を仕事として請け負っているなんて話も聞いていた。およそひとりの人間が、ある映画祭にここまで各方面からかかわることはそうそうないだろう、と驚いていると、「しあわせ」にはこの映画祭の会場であるパークタワーが映っているのだ。

などのもろもろの前情報を得て、とても白紙の状態では見ることができない作品でしたが、徳本監督が上映後の舞台あいさつで語った意図はほぼ達成されていると思いました。記憶を頼りに引用すると、「ドラマがやりたいと思った。いわゆるTVドラマのようなもの(だけ)がドラマなのではなく、見た人の心が、嬉しいとか悲しいとかで簡単に形容できない動きを見せることがドラマなのだと思う」とかそんな感じのことを言っていました。

こういうものを見る機会がふつうどれくらいあるのか、あまり事情に詳しくないけれど、この作品は幸い、これから始まる全国トゥアーへの参加が決まっています。詳しいスケジュールはこちら。京都(5月13日(火)から5月18日(日))、福岡(6月11日(木)から6月15日(日))、名古屋(6月18日(水)から6月22日(日))、横浜(7月19日(土)から7月21日(月))となっています。関東近辺の方は、7/19の16時半からの回をお見逃しなく。わたしも、「スラヴォイ・ジジェクによる倒錯的映画ガイド」を見に、ひさびさに横浜に遊びに行ってみるつもり。

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そのあとは、新宿南口のジャズ喫茶サムライに寄ってから、「黒の試走車」でした。わたしの曲。

01.Main Theme/Donny Hathaway
02.Walk Like an Egyptian/The Puppini Sisters
03.Kurt's Rejoinder/Brian Eno
04.Walk Dont Run/Penguin Cafe Orchestra
05.Maajun/Davey Graham
06.ジャイヴ・イタリアーノ/ボガルサ
07.ペチコート作戦/雪村いづみ
08.Thinkin' 'Bout You Babe/Norton Buffalo
09.ピンク・シャドウ/山下達郎
10.Don't Take It Too Hard/Tuomo
11.レインボーラブ/口ロロ
12.If You Only Knew/Mose Allison
13.Brasilliance/Duke Ellington & His Orchestra
14.Resolution/Prince

次回は6月7日(土)です。有馬ゆえさんのゲスト出場が決定済み。ライヴもあるかも。続報を待たれよ。

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5月31日(土)のPPFNPのイヴェント情報が発表されましたよ。
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by soundofmusic | 2008-05-09 01:41 | 日記 | Comments(0)

Pure Pop For Now People Volume 66


2008年05月31日(土)18時~22時

渋谷エッジエンド(Tel:03-5458-6385)
地図。

800円(1ドリンク&おみやげ付き)

DJ:
ichi(ムサシノカチューシャナイト)
ssota
森山弟(弟)
森山兄(兄、サウンド・オヴ・ミュージック)

PPFNPがまたひとり、自信をもってご紹介する新しいDJは、アンジェラ・アキ似の好青年、ssotaくんです。メスカリートの「黒の試走車」に客として来ていたところをスカウトされてDJデビューを飾った彼は、「コーネリアスのライヴの客入れのBGMみたいなプレイ!」とazさんに絶賛を浴びました。メスカリート以外では初登場となる彼のプレイをぜひとも多くのみなさんに体験してほしいです!

もうひとりは、いまなんとなくレギュラー系のイヴェントが減っていてDJの機会が少ない、ムサシノカチューシャナイトのichiさんです。茶箱でメタルのイヴェントをやっていたかと思うと今月の「黒の試走車」ではソフトロックな輩になっているという変わり身の早さを見せ付けてくれました。当日は二の腕のバラの刺青を希望者にのみ見せ付けてくれることと思います。
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by soundofmusic | 2008-05-09 00:51 | PPFNPイヴェント情報 | Comments(0)

その場所に映画ありて

映画を見る場所というと、まずは映画館とか、あとは借りてきたDVDを家で見るとか、そんなところが誰でも思いつく標準というか正規のあり方ということになるけれど、考えてみたら、それ以外の機会というか場所というかも、いろいろある。

吹き替えの地上波放送。飛行機の中。公共のホールでの試写会。体育館で見せられる、教育効果の高い映画。図書館やなんかの「映画会」(ヴィデオだったりする)。免許の更新の際に教習所で見せられるなんやかんや(バカにしてはいけない。カール・ドライヤーだって、スピードの出しすぎを警告する短篇を撮っていた)。わたしは経験ないが、ドライヴ・イン・シアター。「ニュー・シネマ・パラダイス」では広場の建物の壁に映写されていたっけ。野外で映画を見た経験のないひとは、人生の楽しみをひとつ損していると思う。

三田線の白山の駅を出るとすぐのところに映画館がある。といっても、「映画館」という名前のジャズ喫茶なので、映画が上映されることはたぶんない。そこから千駄木方面に10分ほど歩いて、大通りから脇に200メートルくらい入ると、小さな公園の奥に蔵があって、そこが映画保存協会の本拠地。

先日、そこで映画を見てきた。「D坂シネマ アンコール上映会」と題したもので、500円のカンパで1日、出入り自由。16mmフィルムで上映されるアニメーションやドキュメンタリー。30人くらいしか入らない蔵、床に敷かれた座布団にちょこんと座って、映写機が立てるカラカラという音を聴きながら、見る。コーヒーや食べ物の販売もあり、午後からはアルコールも入手可能。

時間の都合で、短篇3本だけ見て出てこざるを得ないのが残念だったけど、ここではときどき上映会があるので、またぜひ行きたい。なんといっても見たかったのが、東京都都市計画課がGHQの指導だか意向だかで作った「二十年後の東京」で、戦争で焼けてまっさらになったんだからこれを機に理想的なみんなの都市を作ろうぜ! っていう、ヤケクソ気味なポジティヴ・シンキング都市計画映画。いろいろな意味で泣ける。

この30分ほどの短篇は、いま、YouTubeでまるごと見られる。とりあえずその1はこちら。続きもアップされてます。そういえば、見たことのある映画やない映画をYouTubeでつまみ見するってのも、なんというか、新しい映画の楽しみ。外はカンカン照りなのに中に入るとひんやりとしていて、すばやく汗が引いていく蔵の中での上映と、どちらも捨てがたく感じる。

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いうまでもなく、映画祭というのも、チケット取りがおっくうだったりするのを除けば、まさに祭と呼ぶにふさわしいワクワク感を与えてくれるわけで、新宿では、イメージフォーラム・フェスティバルが開催中。

お時間のある方は、5月3日(土)のプログラムIで上映される、徳本直之+鎌田綾監督の「しあわせ」をぜひご覧ください。森山のお友達の作品です。

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その日の晩は、こちら。毎月やってるポピュラー音楽のお祭です。ゲストとして、ロックの真髄を知り尽くした男、ichiさんがひさびさ登場! お見逃しなく。

*黒の試走車<テストカー> Vol.15*
日時:2008年05月03日(土)19時~23時
会場:渋谷メスカリート
地図
料金:500円+1オーダー(500円~)
DJ:az/SZ/チバ/マジック/森山兄
ゲストDJ:ichi
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by soundofmusic | 2008-05-02 01:16 | 日記 | Comments(0)