<   2009年 07月 ( 7 )   > この月の画像一覧

ギター or iPod

d0000025_7485449.jpgお礼状はとにかくすぐに書くものである、帰ってきたらその日のうちに、とりあえずハガキをささっと書いてしまうべし。翌日になればそれだけ億劫になり、ちゃんとした手紙を書かなくちゃ、と思うようになってしまうから。というようなことは、昭和時代のどんなマナーの本にももれなく書いてあり、ましてやブログだったら帰り道の携帯電話で歩きながら打ち込んだりもできるはずで、だからほったらかしにしておいたらいつの間にか1週間近くたってしまっているのは許されないこと。

d0000025_7491665.jpgというわけで、先週の土曜日エッジエンドにいらしたみなさん、どうもありがとう。お客さん、ゲストでDJをやってくれた3名様、そしてマイクなし、PAなしですばらしいライヴをやってくれたジョーさん。ライヴの途中、次々にお客さんがやってきたもので、そのひとたちに少しでも中のほうに入ってもらおうと思ってわたしはどんどん入口のほうに押し出されていった。しまいにはほとんどドアに密着するような感じで、ジョーさんの背中すら見えなくなり、それでも声とギターはちゃんと届いてきてた。最初は、お客さんにジョーさんを取り囲んで車座に座ってもらって……とか考えてもいたんだけど、ふつうに耳をすませばそれで充分で、逆に、あのくらいの大きさの店でPAを使うほうが不自然なんじゃないか、とすら思えた。(もちろん、大きな音の出ない楽器だったら別だけど)

d0000025_749364.jpgジョーさんがMCで話してくれた、音楽の長い歴史に比べたらマイクだとかの音響機材の歴史なんてほんの短いものだ、との指摘はもっともで、目からウロコが落ちもした。それでもしかしわたしは、複製音楽とその歴史に深く影響を受けている(という言い方がおかしいのであれば、それをいつも強く意識している、と言い替えてもいい)。と思ったけれど、もうなんだかどっちでも同じような気がしてきたのもほんとうだ。本質的な機能(=それでなにがしたいか)を考えてみたら、ギターとiPod、たいして違わないんじゃないか。

例によって話がズレてきた。やっぱりまだ(わたしたちのやっているような)DJというものが正確に理解されていないと感じることはあって、つまり、複製音楽をただ並べて再生するだけとはいえ、それでもそこには不思議な一回性がある。どこかで誰かがやっていたセットをそのままマネしても、自分の身についてなかったらそれは確実にかっこわるい。土曜日に出てくれた3人は、そういう意味できちんと自分の中から音を出してくれていて、聴いていてとても楽しかったです。

当日のセットリストが出揃っていますので、見てみてください。次回のPPFNPは9月26日(土)の開催。ゲストは未定ですが、今回とはまた別の、そのときでしかありえない雰囲気になることでしょう。よろしければ聴きにいらしてください。

---

明日の土曜日はこちらです。

*黒の試走車<テストカー> Vol.30*
日時:2009年08月01日(土)19時~23時
会場:渋谷メスカリート
地図。
料金:500円+1オーダー(500円~)
DJ:az/SZ/チバ/マジック/森山兄
ゲスト:たくさんあり

4時間で何人出るんだよって感じのイヴェントです。いろんな音楽がとにかく雑多にかかる、ヤケクソみたいなのになぜか奇妙な統一感があるという音楽の奇蹟(自画自賛ですが誇張じゃないよ)。メスカリートの、なんてことない音響の妙味もいちどぜひ体験してほしいところ。

---

ライヴ写真提供はgsminekさん。どうもありがとうございます!
[PR]
by soundofmusic | 2009-07-31 07:51 | 日記 | Comments(0)

リスト Volume 73 2009.07.25 ゲスト:有馬ゆえ、清水瞬&たひら ライヴ:ジョー長岡

***森山兄***

1 鈴木大介 / インターナショナル
2 Iron & Wine / Belated Promise Ring
3 Dave Waite & Marianne Segal / Safe in Your Castle
4 Wilco / You and I
5 前田憲男=稲垣次郎オール・スターズ / スナップ・ショット
6 The Supremes / This Can't be Love
7 岩渕まこと / 風が吹いたら
8 Spanky Wilson / Speciality of the House
9 ピチカート・ファイヴ / ベイビィ・ラヴ・チャイルド
10 Sahib Shihab / Bohemia After Dark

<コメント>
♪1 武満徹の編曲によるアコギ・インスト。ラピュタ阿佐ヶ谷で開催中の武満徹特集と勝手に連動。原曲は革命歌で、♪起て飢えたる者よ~、でおなじみの日本語詞は、俳優の佐々木孝丸ほかによるもの。これとは別に、佐々木が単独で訳した詞もあるようです。ジャ・ジャンクーの「四川のうた」を見たら、女工さんたち(たしか)が中国語版をうたっていました。

♪2 アメリカーナでしょうか。今年出た2枚組のレア・トラックなど集『アラウンド・ザ・ウェル』に入っている、素性の知れない女とのデュエット。とくにディスク2がびっくりするほどよいのですが、それまでの作品と比べるとあまり評判がよくないらしく、いままでどんだけいいもの作ってたんだよ! とびっくりしたので、未聴のそれらもなるべく早く買いたいです。

♪3 元ジェイドの男女デュオ。英国フォーク。よいです。

♪4 ウィルコの新譜より、いちばんキャッチーな曲? ファイストさんとのデュエット。

♪5 前田憲男と稲垣次郎によるオール・スターズ。いちばんゴリゴリしている時期のキャノンボール・アダレイのサウンドを見事に再現したジャズ・ロック。よいです。

♪6 スプリームスによるロジャース&ハート集より。アナログはいくらでも買えますがCDが全然見つからないので、イーベイで自分としては考えられないくらいの高額($12くらい)で落札。なんか音がしょぼい気がする。

♪7 ムーンライダーズ、鈴木茂(薬物中毒のギタリスト)あたりがバック・アップしていたひと。声が松尾清憲に似てますよね。そうでもない?

♪8 最近(?)クオンティック・ソウル・オーケストラのバック・アップによって(?)復活した(?)昔のソウル・シンガー。75年ごろの曲。メロウなストリングス入り。よいです。

♪9 91年ごろの曲。自分の中では3周くらいして、またふつうにいい感じです。これ、かけたことあったかなあ。ライヴ・ゲストで出てくれたジョー長岡さんから、ちちぼうろ時代にこれをカヴァーしていたと聞かされて驚いた。

♪10 米国で生まれてヨーロッパでも活躍したサックス/フルート奏者。ヨーロッパ時代の録音。バックはクラーク=ボラン一味で、しゃきしゃきとしたキレのよいリズムが気持ちいいです。

***森山弟***

1 ミッシェル・ガン・エレファント / カウ5
2 Ann Sally / All I Want
3 Ben Harper / Ground On Down
4 ポラリス / 季節
5 Wizz Jones / Canned Music
6 ミッシェル・ガン・エレファント / 赤毛のケリー

<コメント>
1 今回はとにかくアベフトシ追悼です。

2 才女アン・サリーのデビュー作「ヴォヤージュ」(2001年)よりジョニ・ミッチェルのカバー。オリジナルは71年の超ド級有名盤「ブルー」に収録です。

3 ワイゼンボーンを武器にフォーク、ブルース、ロック、ゴスペル、ジャンルを飲み込む怒涛の鬼才。「ファイト・フォー・ユア・マインド」(95年)より。

4 フィッシュマンズ以降の、現代日本のダブ・ポップでは最高の部類に入るんじゃないでしょうか。まさに至福の10分間。

5 英国フォーク界の重鎮(キダ・タロー似)によるダン・ヒックスのカバー。77年の「マジカル・フライト」に収録。スティーライ・スパンの歌姫マディ・プライアとのデュエットです。

6 アベフトシ追悼。

***清水瞬***

1 The Millennium / Prelude
2 キリンジ / 風を撃て
3 Fifth Avenue Band / One Way or the Other
4 堂島孝平 / マイライフ
5 Salt Water Taffy / Finders Keepers
6 空気公団 / ねむり
7 Cloudberry Jam / Nothing to Declare
8 Bedtown / 学生服の少女
9 Belle and Sebastian / Funny Little Frog
10 ゲントウキ / さらば!

<コメント>
実は和物・洋物を交互にかけていたのですが、気づいた方は多分いないと思います(笑)
それでは各曲の紹介へ、参りましょう。

1 アルバム Begin より。始まりの曲、ということで。中村和義「ジュビリー」に繋ぎたかったのですが、CDが見つかりませんでした(笑)

2 実質のオープニング曲。森山兄弟に敬意を表して、堀込兄弟の一曲を。

3 『ニューヨークのしたたかさとLAのしなやかさを合わせもつ』バンドだそうです。なんて素敵なハーモニー。

4 ドウジマッド!ポップ職人時代の名曲です。実は↑の曲が元ネタです。

5 しつこいほどのかわいいコーラス。

6 この曲でタイミング良く寝てくれた二人に拍手!

7 スウェディッシュポップのカーディガンズじゃない方。organs cafeによるカバーで知りました。

8 郊外住人の憂鬱とグルーブ。中村佑介氏によるアートワークも秀逸。

9 みんな大好きベルセバ、アルバム The Life Pursuit より。

10 PVも素晴らしいこの曲で、さらば!そして、また会いましょう!

***有馬ゆえ***

1 高橋由美子 / 夏の約束
2 dream / Summer Sweet Days
3 モーニング娘。 / 真夏の光線
4 松浦亜弥 / トロピカ~ル恋して~る
5 河合その子 / 渚のタイトロープ
6 W / 十七の夏
7 ピンクレディー / パパイヤ軍団
8 メロン記念日 / 夏
9 ℃-ute / 「忘れたくない夏」
10 Berryz工房 / 夏 Remamber you

***ライヴ:ジョー長岡***d0000025_17131883.jpg

1 旅の途中(仮)
2 わたしは海女
3 キャラメル
4 プカプカ
5 皆既日食
6 海
7 月とちゃぶ台

☆1は新曲につき仮題。4は西岡恭蔵のカヴァー。5はピチカート・ファイヴのカヴァー。(森山記)
☆写真提供:gsminekさん

***森山弟***

1 ディランⅡ / 恋は桃色
2 サニーデイ・サービス / さようなら!街の恋人たち
3 Mick Green with TMGE / Peter Gunn
4 Dr. Feelgood / I Don't Mind
5 ミッシェル・ガン・エレファント / ロシアン・ハスキー
6 The Jam / Move On Up
7 Jackson 5 / I Want You Back

<コメント>
1 プカプカまでやってくれたジョーさんの素晴らしいライブを引き継いで、西岡恭蔵在籍時のディランⅡより細野晴臣のマスターピース。

2 夏が来るたびに聴きたくなりますよね、これ。

3 パイレーツのミック・グリーンとチバ抜きのミッシェル・ガン・エレファントの共演インスト盤「KWACKER」より。

4 ミック・グリーン~ウィルコ・ジョンソン~アベフトシ。この伝統を引き継ぐ人が出てくることを願いたいけど、しばらくは出ないだろうなあ。

5 アベ追悼。間奏のギター・ソロはまさに鬼の異名にふさわしい。

6 カーティス・メイフィールドのカバーです。

7 マイケルも追悼。

***たひら***

1 THE BAWDIES / Emotion Potion
2 毛皮のマリーズ / Rebel Song
3 BEAT CRUSADERS / I Can See Clearly Now
4 RADWIMPS / 05410‐(ん)
5 THE HIATUS / 紺碧の夜に
6 Yacht / Surfin' Fish '08

<コメント>
1 1stアルバムより。デリコのNAOKIがプロデュース。限りなく洋楽。大貫憲章、星加ルミコ大絶賛。共に、アルバム、シングルに解説を書いてます。次のツアー、リキッドルームワンマンもチケットが当選し、昨日手にいれました。嬉しい。

2 今一番好きなバンド。先日の夏の魔物でトリをつとめた。ローリー寺西大絶賛「今日本で一番好きなバンド」との発言あり。夏の魔物ではローリーとの共演もあったとのこと。夏の魔物は86年生まれ成田大致69くんが仕切り。青森には観たいバンドが来ないから、自分たちでフェスを開催。だから、成田くんのお父さんやお母さんみんなで手伝ってるらしい。ロックだ…。
毛皮ズ、8.3レッドクロスでのライヴは当然ソールド、当然行きます。楽しみ。

3 ジミー・クリフのカヴァー。スナッフがやったカヴァーに近い。アルバムMUSICRUSADERSより。主に30~40代の為のカヴァーアリバム。この歌詞カードで何故かヒダカトオルと松村雄策でダカ松対談をやっていて、それも含めておもしろい。現在各地のフェスに参加中。自分達主催の夏のフェス「ボーイズ・オブ・サマー」は今年から夏にこだわらないことになり、今年は冬に開催予定。

4 もし自分が20才だったら野田洋次郎は神と言ってしまうだろう。日本語と英語の絶妙なミックスも、もうどちらかのこだわりもRADWIMPSを初めて聴いた時に無くなってしまった。アルバムを作り終わると入院という、まさに精神、体力全て使い果たす作り方。最新アルバム『アルトコロニーの定理』は、まったくスキがなくて、少し心配。今回は、まだスキがあってかわいさが残る前作『おかずのごはん』から。

5 活動休止中のエルレガーデンのボーカル細美の新バンド。この曲はアルバムの中でもエルレに印象が近い曲。数少ない日本語の歌詞なのでライヴではキッズ大合唱。ついでに私も。ところで細美と森山兄が同じ年なんて、まさかねぇ。
なぜか矢野顕子と大親友。矢野顕子って、こういうところもチェックしてるんだなと、驚いてしまった。エルレの現在最後のアルバム作成時のロッキン・オンのインタビューで矢野顕子とのやり取りが詳しく載っていて興味深い。Zeppツアー、一次落選。現在二次結果まち。当たるように!

6 VO&Gの井戸勝英。同じメニエール病仲間として心配してたけど、最近調子が良いのか、今年はたくさんライヴをやっている。初めて聴いた時は、すごくパワーポップなのでびっくりしてすぐに買いに行った。ビークルのヒダカトオルも曲の良さにジェラっていた。ライヴもなかなか良かった。夏は余計に盛り上がる、サーフミュージック!

***森山兄***

1 Sonic Youth / Leaky Lifeboat (For Gregory Corso)
2 ウエスト/ロック/ウッズ / ブラック・ドッグ
3 Davy Graham / Blue Monk
4 石川セリ / めぐり逢い
5 Caetano Veloso / Sem Cais
6 Edmundo Ros and His Orchestra / Hana
7 Frank Zappa / Peaces en Regalia

<コメント>
♪1 新譜『ジ・エターナル』より。ソニック・ユースは聴いてすぐ分かる特徴的なサウンドを持っているなあとあらためて思います。このあいだ、ソニック・ユースの人たちに対して「ロックがあってよかったね」と書きましたが逆もまったくそのとおりで、彼らがいかにロック・バンドの地平を拡張したかは、いまさらながらバカにできないなあと思いました。その前にはVUがいたとはいえ。

♪2 日本の3人組。ピアノ+ウッドベース+ドラムの編成ですが、ジャズってくくっちゃうのも乱暴な気がします。これはレッド・ツェッペリンのカヴァー。でもぼくは、ゼペリンはぜんぜん好きじゃないですけどね。(←ピーター・バラカンの口調で)

♪3 セロニアス・モンクの曲をギター1本でカヴァー。azさんとたひらさんが曲名を思い出せずに、トイレに行く途中の小学生みたいにもぞもぞしていたのが面白かったです。(ブラインド・)テストに出ますよ! いや、出ないか。この曲はジョー長岡さんもカヴァーしたことがあるとか。ところで、記録映画「真夏の夜のジャズ」に出てくるモンクがかけているサングラスはつるの部分が竹でできていて、わたしはこのあいだ新しいメガネを作りにゾフに行ったとき、もしかしたら竹のやつがあったらいいなと思いましたがそんなものはなかったでした。

♪4 アルバム『翼』より。武満徹の曲。荒木一郎が詞を書き、歌ったのが初出だと思います。武満の音楽のひとなつっこい一面がよく出てる。ところで、一部で、森山はこのアルバムを持っていない、という情報が出回っていますがそれは誤りです。正しくは、「翼」という曲があまり好きではないというのと、同曲のカヴァーを収録したアン・サリーのアルバムを持っていないというだけのことです。

♪5 カエターノについては昔、にむにむさんが、なよなよしてるんだけど突き刺さる、と評していて、この曲などまったくそのとおりだと思いました。新譜『ジー・イ・ジー』より。イーベイで落札したら、ラトヴィアの首都リガから送られてきました。

♪6 昨日は隅田川の花火大会でもあったので、もしかしたら花火に行きたいのを我慢してPPFNPに来てくれたひとがいるかもしれない(いないと思うけど。なお、花火に行くからといってPPFNPを欠席したひとがいることは確認済み)。そんなひとのためにこの曲を。♪はーるのーうらーらーのー♪というあの曲を、チャ・チャ・チャでカヴァー。ドイツ生まれのバンドリーダーによる、日本の曲のカヴァー集『ロス・イン・ジャパン』より。

♪7 直枝政広の本を読んだら、そういえばザッパってぜんぜん持ってないなと思い出したので買ってみた。『ホット・ラッツ』より。なんだろう、愉快としかいいようのない展開を見せる曲。意外と評判よかったです。フィッシュがライヴでカヴァーしてる様子をさっきYouTubeで見ました。はまりすぎでした。

***おまけCD『Thankful 'n' Thoughtful』曲目***

1. 小坂忠 / ありがとう
2. Fairport Convention / Now Be Thankful
3. Eilen Jewell / Thanks a Lot
4. The Stylistics /Thank You Baby
5. Duke Ellington / Thanks for the Beautiful Land on the Delta
6. コーネリアス / サンキュー・フォー・ザ・ミュージック
7. Towa Tei / Obrigado
8. フィッシュマンズ / 感謝(驚)
9. G. Love / Thanks and Praise
10. The Jazz Crusaders / Thank You
11. Spanky Wilson & The Quantic Soul Orchestra / I'm Thankful
12. ピチカート・ファイヴ / サンキュー
13. Labi Siffre / Thank Your Lucky Star
14. ボノボ / サンキュー、マイ・バディ!
15. Ron Carter / Obligado
16. スピッツ / 謝々!
17. Marian Montgomery / Danke Schoen
18. Bridget St. John / Thank You for...
19. 桑田佳祐 / ありがとう

☆12周年の感謝をこめて、ありがたがっている感じの曲を集めました。
[PR]
by soundofmusic | 2009-07-27 17:15 | PPFNPセットリスト | Comments(0)

球根栽培法

前回ちょろっと紹介した、松田道雄「私の読んだ本」(岩波新書)を読み終えました。松田先生の本、実はたいして数は読んでいないのだけど、なぜか実家にあった「恋愛なんかやめておけ」を高校生のころに読んでいたく心を動かされたのをそもそものはじまりとして、言うまでもなく映画もすばらしい「私は二歳」だとか、帰省する途中の電車で読んで興奮し、そのまま実家の母にこれ読め!と押し付けてきた「私は女性にしか期待しない」だとかが、人生の折々にぽつりぽつりとくさびのように打ち込まれている感じです。

「私の読んだ本」は、20世紀初頭生まれのインテリなら誰もがたどった道であるところの「マルクス主義と私」の回想の側面も大いにある。戦前~戦中にかけてのおっかなびっくりこそこそしながらの読書、敗戦による解放感、そして共産党の内紛による幻滅、と、「そういうこと」があったことはもちろん知っていましたが、松田先生の話、として聞くと、すうーっと水がしみこむように体に入ってくる。所感派と国際派の分裂のあたりも、Wikipediaで何度読んでもどうも覚えられなかったのに、松田先生が、所感派は主流派であるはずなのに地下にもぐって……などと的確な説明をしてくれるので、分かりやすい。

ところで、「球根栽培法」とは、分裂して武装闘争路線をとっていた所感派の機関誌の、偽装のための書名で、このネーミング・センスののどかさが、前から好きだったなあ。もちろん、その名前を考えたひとたちは必死だったわけだけど……。

それにしても松田先生の学習意欲にはおそるべきものがある。医者としての仕事が終わると図書館で医書に目を通し、帰宅してからはマルクス主義の勉強をし、文学書を読む。それと同時に複数の外国語を身につけてしまう。泣かせるのが軍事教練を受けていたときのエピソードで、帰ったらあんな本を読もうこんな本を読もう、と、手帳に記した書名の一覧を「読んで」いたのだ。

さっきから先生先生と書いているのは、松田道雄が医者だからというわけではなく、わたしが彼の書くものの人間性に、全面的かどうかはわからないまでも、圧倒的な信頼を置いているから。ほかにはたとえば、佐藤忠男や山口瞳のことも、わたしはそういう風に読んでいる、というか、そういう風にしか読むことができないのです。

先生の専門の育児関係の本は(「私は二歳」なんかは別として)まだ読んだことがないので、それは、わたしが将来もし妊娠でもしたら、読んでみるつもり。

---

しつこく告知しておりますPPFNP、あさっての土曜日に迫ってきました。詳細はこちら

このブログは読んでいるけれどPPFNPに遊びに来たことはまだない、というような方、もしおられましたらぜひ足をお運びいただきたい。ジョー長岡さんのアンプラグド・ライヴ、必ずやご満足いただけると確信しておりますので。もちろんそう言い切ってしまえるような、万人向けの音楽なんてあるはずがないのも知ってるけどね。

会場のエッジエンドは狭くはないけれども、小ぢんまりとしたお店です。隣のひとと話ができるくらいの音量で、古今東西の軽音楽がかかります。おしゃべりしたりお酒を飲んだり、もちろん踊ってくれてもけっこう。ちなみにいままでかかった曲はこんな感じ。よそで聴けない曲もたくさん聴けて、お耳に栄養が行き渡りますよ。

たくさんのみなさまのお越しをお待ちしております。
[PR]
by soundofmusic | 2009-07-23 05:12 | 日記 | Comments(0)

Blogger's Delight

「高峰秀子って、ブログやってないんかな」というのが、山本嘉次郎「綴方教室」(1938)を再見してまず出てきた感想。この映画の原作は当時評判を呼んだ(らしい)豊田正子の作文集で、高峰がその作文少女正子を演じています。映画が作られた当時はまだ世界中の誰も(本人ですらも)、後年の彼女が稀代の文章家になることを知らなかったわけで、現在のわたしたちは、天才子役のすばらしい新作をリアルタイムで見る感動を味わえないかわりに、この役をデコちゃんが演じるなんて、まるでしつらえたみたいだ、と素朴な驚きを漏らしたくなるしくみ。

さらに、母親の清川虹子に、「またロクでもないこと書くんじゃないよ!」と叱られ、夜、家族が寝静まったあとにのっそりと起き出して鉛筆を握る姿には、木下惠介「女の園」(1954)で、寮の消灯後も隠れてこそこそ勉強するデコちゃんの姿が重なりもします。

しかし、豊田正子の原作の文章+デコちゃんの演技、だけではまともな映画にはたぶんならないわけで、子供なりの観察眼の鋭さをどう映画表現にコンヴァートするか、について、よく考えられているところに興奮しました。

たとえば、清川虹子が高峰秀子を井戸端で叱っていて、カメラが移動すると、井戸の脇には、平然とした様子で洗濯物を棒でぱしぱしと叩いているおばさんがいる。そのあと、高峰が家の中に入ろうとして、びいびい泣きながら汚れた足を雑巾でぬぐっている。あるいはまた、高峰が近所のおばさんに叱られて(なんだか叱られてる映画みたいですが)弁明する場面での、干されている洗濯物や高峰のワンピースにそよぐ風であるとか。こうした細部のいちいちが、以前見たときよりもぐいぐいっと迫ってきて、見直したらいっそう好きになりました。

三村明の撮影のヌケのよさは特筆ものです。劇中、やはり三村が撮影した「人情紙風船」(1937)のポスターが塀に貼られていますが、「人情紙風船」も、もともとはこんなふうにすっきりした画面だったんでしょうか。だとしたら、それを見てみたい。

もしかしたらこの映画は世界で最初期のネオレアリズモなのかもしれないと思いました。そしていまでも、どこかできっと、正子みたいな貧乏な家の娘が、日々のあれこれを忘れないうちにささっと携帯電話に打ち込んで、ブログにアップしてたりするんでしょう。

とか言ってたら、ちょうどいま読み始めた松田道雄「私の読んだ本」(岩波新書)には、彼が大正期に受けた作文教室の衝撃が書かれていました。立川文庫なんかの型にはまった描写や、いわゆる美文ではない文の味わいを彼は学校の作文の時間に知ったのだそうで、「野良文」の歴史、調べてみるとおもしろいかも。それとも、高橋源一郎の指摘する自然主義リアリズム至上主義と同じってことになっちゃうのかな。

---

PPFNP、来週の土曜日に迫ってきました。詳細はこちらをご覧いただきたいのですが、とにかくだまされたと思って一度、ジョー長岡さんのうたをみなさんに聴いてほしい。ふたりあわせて買ったCDが5万枚♪とクレージーキャッツにもうたわれた(ウソ)森山の兄弟が全面的に前面に身を乗り出して推薦するシンガー・ソングライターです。キャッチフレーズをつけるとしたらなんだろね、「ギターを持ったランディ・ニューマン」ってのはどうでしょう。ひとなつっこくてどきっとする感じなので。
[PR]
by soundofmusic | 2009-07-17 20:27 | 日記 | Comments(0)

解なし

d0000025_17225760.jpg<東京の夏>音楽祭という、わたしも含めてこれを読むひとのおそらく誰もそれについて詳しくないであろうところの一連の催し物があり、昨日、その一環としておこなわれた、「日本の電子音楽」に行ってきました。

行ったのは、50年代~70年代の日本の電子音楽の録音を聴くAプログラムとBプログラム。これはなんというべきか、クラブ・イヴェントでもないし、生演奏でもないし、形態としてはレコード・コンサートに近いのだろうけど、リアルタイムでのPA操作による若干のライヴ感もあり、で、なんともいえない類のものでした。(再生に使っていたメディアはなんだったんだろう? 明示されてなかった気がします)

電子音楽とはいっても純粋に電子回路でのみ生成された音、というわけではなく、現実音and/or器楽音と電子音のミックスだとか、電気的に変調された現実音だけでできている音楽だとかもあって、定義が難しい。テープ音楽という言い方もあるけど。

半分勉強のつもりでしたが、聴く機会もなかなかないだろうと思われる先人たちの苦闘の足あとの数々、なかなか堪能できました。始まったばかりで、正解もノウハウもなかったジャンルならではの面白さ。

簡単に感想を。

Aプロ。黛敏郎「ミュージック・コンクレートのための作品《X, Y, Z》」は、いまでも単純にかっこよく、鉄を叩く音のリヴァーブの深さとテープ速度を変えただけと思われるエフェクトの力強さにぶちのめされます。武満徹「テープのための《水の曲》」は、タイトルどおり、水の跳ねる音やしたたる音などだけを使い、エフェクトをかけまくって鼓のような音にしている。パーカッシヴでかつ隙間があって、西洋人が聴いたらそうとうショックを受けるんじゃないかな。なぜだかジム・オルークが好きそうな曲だな、と思いました。「水の曲」もかなりそれっぽかったけど、高橋悠治「フォノジェーヌ」(だと思う)は、発想も音の質感も完全に現代のエレクトロニカと連結している。武満徹「《怪談》より〈文楽〉」の琵琶の音には、まるでブルース・ギターのような悪魔的な弦のゆるみがきこえる。

Bプロ。一柳慧「東京1969」は、落語、ラジオの声、演歌などが重なって、途中からヒップなビートと異様にブーストされたベースが聞こえてくる。同時代の凡庸なロックやジャズよりもはるかにヤバい音響。湯浅譲二「《ヴォイセス・カミング》より〈インタヴュー〉」は、インタヴューの音声だけを素材として使い、ただし本題の部分以外、つまり、「えーと」「あのー」「一種の」「それは……」などだけ抜き出してコラージュしている。聴いているとなんだか音楽のように聞こえてくるから不思議。この曲での照明はステージ上の左右のスピーカーだけを照らし出していて、客はふたりの話者を見るように、そのスピーカーを見ていた。

といった具合に、始めてはみたものの滞っているわたしの現代音楽熱をまた再燃させてくれそうな、興味深い時間でした。音源がふつうにCDになっていたりするのかどうかも分からないし、ましてや爆音で聴くことなんてめったにできないでしょう。有馬純寿の音響ディレクションも、カラフルでよかったです。

---

ところで、草月ホールでおこなわれたってのが個人的にはまたツボで。草月ホールのなにかのイヴェントに、いまから考えたらそうそうたるメンツ(武満徹、小林信彦、ドナルド・リチーなどなど)が客として来ているのをとらえた写真があって、そこに写っている20人くらいのうち8割くらいがいまでも名が知れている芸術家、文化人であるっていうやつ。検索したけど見つからなかった。この写真を知っているひとは、これの日本60年代サブカルチャー版みたいなもんだと思っていただければよい。

もうちょっと(だいぶ、かな)時代が下ると、ナイロンとかピテカンとかが出てきて、さらには90年代の下北なんかにつながっていくはず。実際にその場にいたひとは、いや、別にふつうだったよ、と言うんだろうね。

金とコネがあって、草月ホールでオールナイトのイヴェントなんかできたらいいだろうなあ。映画の上映(実験的な短篇がまじってもいい)とDJとトークが組み合わさったような。あすこはロビーも広いから、休憩時間にジャズ・コムボに演奏させたりするのもおもしろいかも。そんなことを考えました。
[PR]
by soundofmusic | 2009-07-12 15:49 | 日記 | Comments(0)

説明書き

d0000025_19143824.jpg昨日、紀伊國屋方面に用事がありました。本屋にいるのはまんざら嫌いでもないので、用事の始まる前の時間、紀伊國屋の文芸書の新刊のコーナーで目立つようにディスプレイされている何冊かを手にとって、それぞれ1分くらい、ざっと眺めてみました。村上春樹の「1Q84」、青木淳悟「このあいだ東京でね」、磯崎憲一郎「世紀の発見」、あと1冊くらい見たかもしれないけど覚えてない。

いま調べてみたら、青木の本が出たのは2月。ということは、そんなに売れてるんだろうかとびっくりするけれど、その場では奥付は見なかったので気付くはずもない。そのかわり、その場で驚いたのは、この3冊がまったく違った原理と発想でもって書かれているんだろうなと、それこそぱっと見ですぐわかったこと。

たぶん村上春樹のは、心地よい語り口に乗せて上下2冊を一気に読ませてしまうだろうと予感できる。できるのだけど……とその先は今日の本題ではないので言わずにおく。試聴機に入っているAとBのCDがそれなりにまったく違うものであり、自分にとってお金を出すに値するものかどうかは、それぞれ1、2分聴いていれば分かるのだから、本屋で同じようなことが起こったとしても不思議ではない。

そこで思い出したのは、たしか桐野夏生が、たぶん1か月くらい前に、新聞だったかなにかで、グーグルによる書籍のデータ化について書いていたこと。詳細は忘れたけれど、1冊の本の全部の文章のうちデータ化されるのは2割程度、だとかの指摘に続いて(この指摘が事実として正しいのかは分からないし、わたしが正しく覚えている自信もありません)、2割を読んだだけでこれはこういう小説だ、と分かった気になられては困る、と憤慨していた。

そのときのわたしの感想を、昨日の紀伊國屋で感じたことと重ね合わせて、身も蓋もない言い方でいうならば、「いい気なもんだ」となり、もう少し穏健な表現を駆使すれば、「ひとにはそれぞれ事情がある」となる。野暮を承知でわかりやすく説明するなら、小説を読むのが好きな特別なひと以外の一般の大人から、単行本1冊分の金と時間を取り立てるのがどういうことなのか分かってるのか、ということであり、2割読んだくらいじゃそれが価値のあるものかどうか分からないからあとの8割も読んでくださいね、とは図々しすぎやしないか、ということです。小説家が小説が好きなあまり、小説のことしか考えられなくなっている状態は、それはそれで正しいのだけど。

少なくともいまのわたしは、最後のほうに面白い部分があるから、といわれても、そこまでに至る文章に魅力がなかったら、読んでいたくない。わたしが読みたいのは、本でも小説でもベストセラーでもミステリーでも情報でもなくて、文章だからだ。

一昨日だったかな、電車の中で、わたしの前に立っている女のひとがなにか本を読んでいた。そのひとの頭の匂いをかぎながら肩越しに見ると、その本がリリー・フランキーの「東京タワー」であることはすぐに分かった。そこに書かれているのはほぼすべて「説明」であるようにわたしには見えた。わたしはわたしの観察が間違っていることを望んだ。「説明」の本が何百万部も売れるはずはないからだ。

---

写真は水道橋で撮ったもの。右側の紙が剥がれている部分、ほぼ確実に独島と書かれているのだけど、なぜか一瞬「松島」に見えて、不思議なシャレを言うもんだな、と軽く感心しかかってしまった。損した。
[PR]
by soundofmusic | 2009-07-05 19:14 | 日記 | Comments(0)

それ恋? それバル?

隙あらば毎日が映画の日みたいな生活をしているのでいまさら映画の日といわれてもピンと来ないのですが、ひさしぶりに映画の日に映画の日らしく、ふだん1800円の新作を1000円で見に行くことをしてみました。ウディ・アレンの「ヴィッキー・クリスティーナ・バルセロナ」、邦題「それでも恋するバルセロナ」です。

ウディ・アレンの映画でいちばん何が見たいかといって、わたしにとってそれはやはり、アクション俳優ウディ・アレン本人が理屈をこねたり飛んだり跳ねたりぼやいたり困ったりするところなので、その意味では本作、「メリンダとメリンダ」や「マッチポイント」と同様、物足りなさが残る1本でした。まあ、このひとの場合、うっかりがっかりしちゃっても、毎年撮ってるのが分かってて、しばらく待ってればまた次が見られるからあんまり凹まなくてすみます。

新宿ピカデリーで見て思ったのは、まるでお祭りのような場所だなあと。なんでもない平日なんかはそれほどでもないのは知っていますが、サービス・デイとはいえ昼間っからこの賑わいだと、週末はどんなことになってるのか、心配です。行かないからいいけど。ほんとにもう、わざわざ館内の高い自販機でジュースを買うってのからしてわたしには理解不能。

---

これ、夜勤が終わったあと、山手線の車内で2周(=約2時間)眠ってから昼過ぎの回を見に行きました。で、見終わって帰ってきてからまた仮眠して夜勤。このペースに慣れると効率よく時間を使えるかなあと思うけど、この間はまったく同じパターンで映画見に行って、夕方帰ってきて1時間半くらい仮眠して出かけるつもりでいたら盛大に寝過ごして大失態をやらかしたので、やっぱり無理はしないほうがよさそう。

というのは、20時に待ち合わせしていたので、18時半に起きるつもりで17時に寝たのですが、2回の目覚ましアラームを難なく突破してしまい、目が覚めたら21時半過ぎでした。携帯を見たらメールが8件に留守電が2件入ってて、その数字を見たとたんに汗が噴き出た。あの、寝る前に予想してたのと違う時間に起きてしまったとき特有の、「あれっ、今日って何の日だっけ?」といううろたえ、ひさしぶりに味わったなあ。

などと感慨にふけっている場合ではなくて、その日は、90年代後半にときどき遊んでいたOさんと、Tさんと、3人でタイ料理を食べに行くことになっていたのでした。結局、森山抜きでタイ料理の会は決行されていたのでそれはまあよし。TさんとOさんとふたりして、会ったの何年ぶりだっけねえとかいう話をしていたらしい。10年ぶりくらいじゃないかとか言ってたそうだけど、森山の確認によるとせいぜい5年くらいのもん。みんな、2000年代に入ってからの感覚が麻痺してるみたい。

---

10年といえば……ウィルコの新譜が出てますが、新譜が出ると知ってからなんだかやたらと待ち遠しくって(出たってすぐ買うわけじゃないのに)、そういえばいろいろ持ってないのあったな、と思って、ビリー・ブラッグとウィルコの共演盤『マーメイド・アヴェニュー』を買いました。リアル・タイムでちらっとくらいは聴いてて、スルーしていたんだけど、ちゃんと聴いてみると、いい感じにシブくて、ああ、耳って時間がたつとやっぱり変わるもんだなとあらためて実感。このアルバムが出たのが98年で、印象としては2003年くらいじゃないかと思っていたから、うむ、ここでも意識と時間のズレが発生してる。

ソニック・ユースの新作『ジ・エターナル』、どっかでかかってて、あ、ソニック・ユースだなってすぐわかって、なんだかかっこいいような気がしたから注文して、ただしまだ届いてない。たぶん、彼らのアルバムを買うのも10年ぶりくらいのはずで、今年はそういう、ひとまわりする感じの年なのかも。
[PR]
by soundofmusic | 2009-07-02 04:07 | 日記 | Comments(0)