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女生徒

神保町シアターの高峰秀子特集で、石田民三の「花つみ日記」を見ました。ここは奇特な映画館で、たいして集客に貢献しないであろう石田民三のニュープリントをぽつりぽつりと焼いてくれていて、これも今回のためのニュープリント。ここやフィルムセンターで何本かこの監督のものを見て、構図の美しさが際立っているのに対して話は弱いな(眠くなる)、とやや物足りない感を覚えていたのだけど、この作品ではそのへんもクリアされていて、結果的にいままで見た石田作品の中ではこれがベストでした。

まず冒頭、校庭をほうきで掃く女生徒たちの作る幾何学的な動き。ここなどは映画というよりスクリーンに映し出されたデザインといってもいいほどで、ここでさっそくノックアウトされてしまいました。さらには、校舎の壁に寄りかかって2階の音楽室を見上げる女生徒たちの壁への寄りかかり方のリアリティ(+微風によそぐヤツデ)だとか、地面に打ちつける雨粒が反射して光のダンスのように見えるカットだとか、よほどのボンクラでなければ見逃すことのできないキラキラした瞬間がそこかしこに充満しています。

そうした、トリッキーになる寸前の画面の作りこみのうまさもさることながら、大阪の置屋の娘・高峰秀子と、東京から来た転校生・清水美佐子との、思春期特有の濃密な友情の描写がこれまた見事で、ふたりが一緒にバスに乗るだけでもう至福だし、ちょっとしたことでケンカしてしまうお決まりの展開にも胸をかきむしられる思い。わたしはたぶん今まで一度も、デコちゃんを女性としていいなと思ったことがないんですが、ここでのデコちゃんの繊細な表情の移り変わりには、何度かどぎまぎさせられてしまいました。と言えば充分だろうと思います。

行ったことのあるひとはご存知だろうし行ったことのないひとはご存知ないことでしょうが、神保町シアターはなぜか都内の名画座でも屈指の老人率を誇っていて、この映画も、見に来ているのは、有体に言って、ジジイばかりでした。せっかくの天気のいい土曜日の朝、こんなかわいらしい映画をほったらかして、なにやってんのさ、若い娘さんたち! などとあおってみたところで、わたしがこの映画を見てほしいと思っているセンスのいい女子のみなさん(安藤尋「blue」が好きだったりするような)は、こんなむさくるしいブログは読んでないでしょうけど、神保町シアターではまだあと4回(12/27、28、1/7、8)上映されますから、ちょっとでもピンと来たら、足を運んでみてほしいと思います。

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いまさらながら、11月のPPFNPのセットリストが完全版になりました。

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一部でちょっとだけ、キャロル・リードの「フォロー・ミー」という映画について盛り上がっているので書いておきますと、1月12日(火)にテレビ東京で放送されるそうです。サントラ(ジョン・バリー)はCD化されているけど映画自体は未ソフト化。録画せねばなるまい。この映画の評判についてはここらへんとか見てみて。
by soundofmusic | 2009-12-27 02:36 | 日記


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