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東経135度の女

東京駅のそばのビルの地下にあるインデアン・カレーが、セットみたいなつくりであることは以前にも書いたかと思います。ただ単に建てられたばっかりのようだとか、ハリボテみたいな感じだ、というにとどまらず、ここは、昨日作りました! 今晩撮影が終わったらすぐにバラします! と、店全体が主張しているみたい。

先日、会社のそばの居酒屋にお昼ごはんを食べに行ったら、そこが、これまた、セット感まるだしの店で、嬉しくなってしまいました。業種は違うけど、夜中にやってる、志村けんとか優香とかハリセンボンとかが出ている番組にそのまま使えそう。キモは照明なのかな。どばーっと均等に光が当たってつるつるな様子が。

しかし、もし本物のような店(?)だったとしたら、セットみたいだとは思わないだろうし、逆にまた(「逆に」ではないけど)、本物にしか見えないセットだってある。つまりセットのような店とは、まぎれもない実物でありながらなぜか作り物のように見えるものであって、なおかつ、その場合の作り物とは、本物のように見せようとして諸事情により完全には果たせずにいるものであると。そうした奇妙なねじれ状態が、都会のところどころにふと顔をのぞかせていて、そして、そんなものを気にしているのがたぶんわたしだけである、と、そこまで含めての楽しみなのです。

いま思い出した、同じような種類のネジレを感じる話。ゼロ年代の最初のほうに家族で旅行したことがあって、イングランド南東部の、ゲソみたいな半島のあたりだとかをうろうろしたりしていた。何日目かに、城跡に行った。城跡といっても、小高くなっているだけの場所で、お堀とか天守閣とか落武者の人形とかは、ない。その城跡は街を見下ろせる気持ちのいい場所だったんだけど、そこで母が、「外国みたいね!」と不意に漏らして、このひとすごいこと言うなあ、とびっくりしたことがあった。……この話は何度か書いた気がするね。

もうひとつ、これも既発の情報をつけくわえるならば、海外に行くとき、飛行機が離陸したあたりとか、あるいは現地に到着するかのあたりで、時計を現地時間にかえたりしますね。うちの母、あれ、しない。出かけるときも、外国にいる間も、帰ってきてからも、時計はずっと日本標準時。東経135度の女なのです。

それはさておき、そのセットみたいな居酒屋では、シュガーの「ウェディング・ベル」がかかっていて、鶏唐揚げとサバの塩焼きの定食を食べながら、この曲、二階堂和美のカヴァー・ヴァージョンで聴きたいな、と考えていました。
by soundofmusic | 2010-08-12 14:44 | 日記


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