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東京に行ってきた

東京に行ってきた_d0000025_15323956.jpg前回の日記で書きましたとおり、木の実横丁企画「東京」vol.3「ブルースはダンスミュージックだ!」に行ってきました。

会場のTHREEは、ベースメント・バーの隣。以前はウェッジという名前のクラブで、怪獣公園関係のイヴェントで何度か来たことがあった。……はずだったんだけど、場所をすっかり忘れていて、店が見つけられず、あたりをうろうろしてしまった。余談ながら、三軒茶屋から歩いていったんだけど、いつ着くともなく茶沢通りを歩いていると、ロクな地図もないまま、ライヴハウスを目指してえんえんと南ロンドンを歩いたときのことなんかを不意に思い出した(景色は似てない)。

トップバッターの金田デルタ正人はほぼ見逃して、あかいいえ with the tomato、big☆bow、ギターパンダの3組を拝見。あかいいえ with the tomatoは、クラリネット、バンジョー、トロンボーンを含む大所帯。みなさん、みうらじゅんのマンガに出てくるボブ・ディランみたいな、ホーボーっぽい格好が、オールドタイミーな音楽性とマッチしてて好もしい。歌い出した瞬間、男なのか女なのかわからないような不思議な声が聞こえてきて、軽く動揺する。とはいってもそれは、両性具有的なあやうさとか、カストラートっぽいとかではなくて、性別そのものを無化するようなというか。と書いていて気付いたけど、中性的、という表現は逆に性を意識させますね。

big☆bowは、ギターとウッドベースのふたり組。ベースは元ボガルサのひとらしくて、このコンビもかなり直接的にスリム&スラムのコンセプトを下敷きにしているようだけど、そういうものは伝承されていったほうがいいから、どんどんやってほしい。「ファイヴ・ガイズ・ネームド・モー」をやったりもしていたけれど、単にカヴァーしているというだけでなく、ジャイヴ・ミュージックの持つヒューモア、軽口の感覚が体にしみこんでいるひとたちだと思いました。大阪のひとが自然に口から冗談が出るみたいな感じ、と書いたら、関東人の偏見、ステレオタイプと言われるでしょうかね?

ギターパンダは、元ディープ&バイツ(この名前が出てこなかった……)などの山川のりをによる、ひとり組ロックバンド。全身パンダの着ぐるみで出てきて、ハイハットを踏みながらエレキ・ギターを弾き語る。歌もギターもMCもぶっとい存在感で、幼稚園児の持ち物すべてに名前が書いてあるみたいに、音楽そのものにマジックインキで「山川のりを」って書いてある。たぶん日本語が通じる場所ならどこでも、どんなお客さんを相手にしても、場を作ることができるだろうなと思いました。と帰り際に主催の小川原さんに話したら、日本どころかタイでも大ウケをとったそうです。わたしのイメージだと、清志郎とか、エンケンなんかとおんなじあたりにいる。声質は加藤ひさしに似てるのかな?

途中でうたった「新しい町」(オリジナルはカンザスシティバンド?)という曲、このたびの震災からの復興についてのうただと思いますが、気取ってもおらずひねくれてもいないメッセージ、素直に受け取りました。昭和20年の暮れも押し迫ったころに公開された「東京五人男」(斎藤寅次郎監督)という映画があって、もちろん本物の廃墟のままの東京でロケされているのですが、当時のひとがリアルタイムでこの映画を見て励まされたりほっとしたり笑ったりしたであろうことを、わたしは「新しい町」を聞いて連想し、共振しました。

昨年の大震災と原発事故に対する音楽方面からのリアクションは、少なくとも時代を超えて生き残るであろううたを生み出す段階にはまだ至っていないように見えますが、阪神・淡路大震災が「満月の夕」というスタンダード・ナンバーを生んだように、2011年は「新しい町」ができた年、として記憶されることになるのかもしれません。ただしそれはまだ誰にもわからないですけどね。陳腐な言い方だけど、うたは生き物だから。いろんなひとに聴かれて、うたわれて、揉まれて、擦り切れて……という過程を経ていく必要がある。たぶん「新しい町」は、それに耐えうる地金の強さがある曲だとは思います。

そうだ、バンドのあいまや終演後の、gommisseyによるDJもよかった。古いR&Bやジャイヴ、ジャンプ・ブルースなんかでまとめた、シブくてポップな統一感がある選曲。なにしろモーズ・アリスンをかけているのだから、良いDJに間違いないでしょう。

木の実横丁企画、次回以降も都合がついたら遊びに行こうと思いました。このブログでも情報をお伝えしていきたいです。

*写真はギターパンダ。小川原さん撮影のものを勝手に拝借しました。
by soundofmusic | 2012-02-12 15:33 | 日記


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