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ある歴史的ロマンス2005、または、本当の戦争の話をしよう

ある歴史的ロマンス2005、または、本当の戦争の話をしよう_d0000025_15145337.jpg今年は戦後60年なんていって、TVやなんかでもいろんな特番が組まれているみたいだけどさ。実のところをいうと、満州事変に始まるどうのこうのとか、東アジア諸国に向けての謝罪とか、そういうヤマモトサツオ式の長ったらしい話なんか、ぜんぜん聞きたくないんだな。

それでなくっても毎年夏になると、やっこさん、でっかい車で乗り付けて戦争の話をしたがるもので、子供にスイトン作って食べさせたりとか、そうやって、「戦争を語り継ごう」って腹なのかも知れないけど、これから起こる戦争は、今まであったのとは別の戦争だろう、たぶん? 第一、うちには近所のウェルシアで買いこんだ牛角ラーメンがごっそり山積みになっているから、戦争が始まっても国連軍か米軍が助けに来るまではそれで食いつなごうって算段なんだ。どうだろう?

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ユーロスペースで上映中のジャン・ユンカーマン「映画 日本国憲法」、あやうく見るのを忘れるところだったが、見に行ったら、やっぱり感銘を受け、そして、暗澹たる気持ちにもなってしまった。

日本人はもちろん、米、中、韓、中東、世界各地のひとびとが日本国憲法第9条をほめ殺す。まったくもって正当な意見の連発、はらわたにズシンとくることばばかりだ。政治学者、ダグラス・ラミスの言う「第9条は、キズだらけになって、いたんでいるけれども、まだ生きている。国と国との交戦権の名のもとにまだ誰も殺していないから」だとか、実際、泣けてくるのだが。

客層はユーロスペースらしからぬ、中高年が中心。中高年だってもちろん選挙権はあるから、そういうひとたちが見て、思いをあらたにすることも大事だろうけど、言いかえれば、そういうひとたちはわざわざ見なくても、分かっている。

いったい、どんな人間が石原・小泉に投票しているのかと思うのだけれども、昨今のカジュアル系のデモよりも、石原・小泉のリーダーシップ(に見えるもの)のほうがインパクトがあってカッコイイ、と言われたら、正直、反論できない。デモをやってるひとたちは、そうでないひとたちを愚民扱いして、啓蒙してやらなくては、ぐらいに思ってやしまいか? そうでないことを祈る。

ところで、ユンカーマン監督、あの珍作野球映画「ミスター・ベースボール」の原案を手がけた人間と同姓同名。もしかすると、同一人物だろうか? だとしたら、なにやら愉快だ。

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暗澹たる気持ち、について。

日本(とイタリア)は戦争に負けたおかげで数々の名画を生み出してきたけれども、それらは、敗戦という共通体験なしには何の価値も持たないのではないか、戦争そのものに対して普遍的な思考をめぐらせてはいなかったのではないか……。

考えてみれば、自分も、ふとしたなりゆきで日本映画を見出したばかりのころ、「なんでこんなに戦争のことばかり話してるんだ!?」とびっくりしたものだ。しばらく見続けているうちに、状況がそうなってしまった必然性もなんとなく分かる気がしたし、「二十四の瞳」が無数の戦争(関連)映画のなかでいかに美的に屹立しているかも分かった。

そういうコンテクストを抜きにして、「名画といわれているから」リメイクしてしまうのは、安易というほかないのじゃないか。そして、安易に作られた映画(でもTVでも、なんでもいいけど)ほど私たちを落胆させるものはない。

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三百人劇場でソビエト映画の特集がおこなわれていて、戦争映画の小特集も組まれている。グリゴーリー・チュフライの「誓いの休暇」が泣けたが、やはりチュフライの「君たちのことは忘れない」での終戦のシーンにはちょっと驚く。

日本映画では終戦=敗戦だから、映画だとだいたい、8月15日の天皇陛下の放送、として描かれる。ところが、戦勝国であるソ連では、違う(当然だが)。

主人公の一家の長男が列車に乗っていると、白い馬が並走してくる。馬に乗った男の手には、燃え盛るたいまつ。観客も乗客も、等しくいぶかしがる。列車が進むにつれて、沿線の家々が庭で火を焚いているのが見える。

続いて、大きな布を掲げた人たちが線路際に登場。そこに書かれたキリル文字は私たちには読めないけれども、ここにいたって、それは戦勝のお祝いの文句である、と容易に了解されるというわけ。

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少しばかり歴史についての感覚があれば、日本はもう決して戦争に関与しない、などと楽観視できるはずがないのは分かりきったことだし、ましてや、戦争が起きても自分だけは生き残る、などと思うのは端的な間違いだとも分かるはず。

ところで、歴史には正史と偽史があって、なんて話は長くなるからよしにしますけども、9月のPPFNPのおまけは、ある歴史の記述の試みといえなくもない、そんなものになる予定。ま、いつも偽史ばかり書いてきた気もするのだけど。

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関係ないけど、写真は雑誌「MOJO」の最新号。特集はディラン、おまけはディランのカヴァー集のCD。太っ腹! 買ったはいいが、いつ読むことやら……。

(森山)
by soundofmusic | 2005-08-22 15:00 | 日記


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