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革命はTVじゃやってない

金曜日、シネセゾン渋谷で、マリオ・ヴァン・ピーブルズ「バッドアス!」を見る。レイト・ショウの最終日。空いている。メルヴィン・ヴァン・ピーブルズによるブラック・シネマの先駆的作品「スウィート・スウィートバック」の制作をめぐるあれこれを、息子のマリオの監督・主演で再現した作品。

映画を作ることについての映画、しかもそれが、このような逸話まみれ(予算のやりくり、スタッフのやりくり、組合を通さない多国籍のスタッフ、前例のない危険な題材)の作品についてであれば、おもしろくないはずはなく、「バッドアス!」も、その例に漏れず、めっぽうおもしろいのではあるけれど、ただ、期待以上に、というほどではない。

映画作家としてのマリオは凡庸といってもいいが、ともかく、ある革命がこうして記録されて広く(でもないか)世に知らしめられたこと、すべてはこれに尽きる。革命はTVじゃやってない、でも、こうして映画になったのだ。

黒人ヒーロー、スウィートバックが白人の警官を殴り倒す場面での、黒人たちの熱狂。見ているこちら(黄色人種)を拒絶するようなその盛り上がりは、自分たちにとってのはじめてのヒーローが出現する瞬間を、実に腹にストンとくるように、伝えてくれる。

スクリーンの中のぼくのヒーロー。それはたとえば、ウディ・アレンであるとか、トリュフォーの描くアントワーヌ・ドワネルであるとか、そしてなにより、岡本喜八の描く江分利満であるとか。フロベールじゃないが、実際、江分利満なんか、何度も見ているうちに、「これは私だ!」と叫びたくなることがある。

それはさておき。「バッドアス!」の最後に一瞬登場するのは、「スウィート・スウィートバック」で、商業的な成功を得たかわりにハリウッドを追放されたものの、今もなお現役のメルヴィン本人。その不敵で大胆な笑みは、じいさんになっても、ヒーローそのものだった。

* * *

続いて、毎度おなじみのエッジエンドに移動して、原田くんたちのイヴェント「Keep On!」。コンテンポラリーなUKロック中心のイヴェント。ふだんそういうものを聴かないことはバレていて、原田くんには「退屈しちゃうかもしれませんけど」などと言われてしまう。ところが実は、そうでもないのだな。まあ、クラブでかかっている音楽なんてのは最終的にはある程度なんでもいいというか……そういうと語弊があるけど。

クラッシュの「ロンドン・コーリング」。あのイントロのギターのカッティングとドラムのビートが歩調を合わせていく様子、そこにもっさく斬り込んでくるベース。ひさしぶりに、しかも大音量で聴くと、これぞロックの録音! という感じ。なかなかよござんした。

ストーン・ローゼズの「エレファント・ストーン」。天才の基準とは同時代の平均からどのくらい隔絶しているか、だ、などという物言いを思い出した。

新しめのもので要チェックと思った物件は、ザ・ルーツの周辺人物であるらしいコーディ・チェスナットの生音ヒップホップ、オーディナリー・ボーイズのラモーンズ・カヴァー「KKK」、といったところ。

このイヴェント、不定期開催らしいですが、なんだかんだで10回くらいはやっているそう。みなさんもぜひ遊びに行ってみてください。

(森山)
by soundofmusic | 2005-10-30 03:19 | 日記


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