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ほんとのきもちは

いまの家に引っ越してきてから1年半近くたつ昨日、自宅の最寄り駅をはじめて利用した。というのもそれは都電のとある駅なので、それに乗ってどこかに行くことがいままでなかっただけの話。終点の早稲田で降りると小雨が降り出してき

めんどくさいので、以降、ふつうに書きます。早稲田大学の文学部の正門の斜め向いくらいにある、茶箱という店のことはあるいは以前にも書いたかもしれないけれど、そこで開かれた、「早稲田歌謡大全集」なるイヴェントに行ってきました。

昭和と平成が地続きであると分かるナイスな試みでした。ゴールデン・カップス「ヘイ・ジョー」のベースラインの異常なまでのうねりに悶絶し、シュガーの「ウェディング・ベル」のサックスがスタン・ゲッツみたいなのを発見し、「吐息でネット」が誰の曲だか思い出せずに家に帰ってから調べたり、ファントムギフトの「ハートにOK!」でスイッチが入って踊り狂ったり、そこをどんまいさんに見つかってというか指摘されて恥ずかしい思いをしたり、しました。

3月のPPFNPにご参加なされるどんまいさんからは、コメントをいただいた。いわく、「ピュアポップを食う気で行きますから!」とのこと。弟よ、負け戦覚悟で挑まなくてはならなそうだ。だ、誰か、千人針を!

どんまいさんなどによる渋谷系イヴェント「Flat Field」は、3月3日、エッジエンドにて。お暇な方、当日お会いしましょう。

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もひとつ告知がありました。課外活動っていうか、単なる飲み情報。

渋谷、道玄坂を登りきったさらに先のバー、メスカリート地図)にて、来週、17日(土)の夜、森山とマジックさんでレコード回します。PPFNPをさらにまったりさせたような感じになるかと。フードはほとんど置いてないので、持ち込み自由というか、強く推奨。チャージ500円、ドリンクすべて500円。なごめる店です。

スタートは22時半かそこらで、2時くらいまで適当にやってる予定。そんな時間じゃ帰れない、という方も、終電まででもけっこうですので、ぜひお気軽に遊びに来てください。


このイヴェントはよんどころない事情で中止になりました。近日中に振替日を決定したいと思います。続報をお待ちください。

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今週は、満を持してという感じで、シネマヴェーラ渋谷の「次郎長三国志」全9作を順番に見始める大事業を始めた。いまのところ5部まで見て、残りは来週のお楽しみという状態。しかし、ねえ、これはとんでもない映画ですよ。この夢の中に入ったまま、出てきたくない。ほんとの気持ちはそんなところ。

お話としては、よく知られた清水の次郎長一家の物語。もともと米屋の息子であった次郎長が、ケンカでひとを殺してしまったと思い込んで旅に出て、侠客となって戻ってくる。で、しだいに子分が増えたり、ほうぼうでケンカをしたりする。

ところでわたしはストーリーの要約が大の苦手で、また、おもしろいかどうかはストーリーにあまり関係ないとも思っている。より正確に言えば、ストーリーに依存しない部分でのおもしろさのほうを高く評価する、ということかも。

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このシリーズに限らず、よいときのマキノならではの魅力は、知っているひとはよく知っているけれどもそれはあまりにも言語化困難なものであるため、あまり広く喧伝されていない。たとえばそれはふっくら炊き上がった米の飯とかよく冷えたスイカとかスイスロールとかがグルメ本に絶対に載らないのと似ている。

ありきたりないいかたをすればそこにたしかに人間がいる、となるのだけど、たとえば、第五部。ここでは、次郎長とその妻、お蝶とのなれそめが当人たちによって語られる。それを子分たちがはやしたてつつ傾聴するが、こののろけ話には実際涙が出てくる。そして、なんで泣いているのか自分でもよく分からない。

それに続く甲州への殴り込み。あまりに多幸症的な前半とはうってかわって痛々しい。ここで森繁久弥が片目を斬られ、加東大介は背中から斬りつけられて息も絶え絶えだ。いや違う。片目を切られたのは石松で、死にかかっているのは役者じゃない、三保の豚松そのひとだ。でなければ、石松がやられたときに自分まで痛みを感じるはずがない。

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1953年から54年にかけて作られたこのシリーズは全部で10作になるはずだったが、当時、東宝が作っていた大規模な時代劇に予算をとられて、9作までで終わってしまった。その大規模な時代劇に加東大介が召集されることになり、撮影現場に「ブタマツコロセ」との電報が届いたのは有名な話。一説では、助監督の岡本喜八が「コロシヤマキノ」と返事の電報を打ったとも聞く。

いくら「七人の侍」だからといって、豚松をそうして恣意的に殺すことをオレは許さないよ。映画史上のエピソードを知っていながらもなお、わたしはいま、兇状旅に出た次郎長一家と別れ、戸板に載せられて清水に運ばれていった豚松の身の上を案じている。

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1/20のセットリスト、完全版に更新されました。ご覧ください。→見る
by soundofmusic | 2007-02-10 14:42 | 日記


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