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熱の缶詰

ひさしぶりです。ちょっと出てました。

もう2週間くらい前になるけれど、ロブ・ライナー「最高の人生の見つけ方」(邦題はわりとしょーもないが、内容はなかなかよい)を見に早稲田松竹に行ったら、劇中、キャンド・ヒートの「オン・ザ・ロード・アゲイン」がかかっていて、おっ、と思った。というのは、別段わたしがキャンド・ヒートのファンであるとかではなくて、映画の前に見た、ヴェンダース「都会のアリス」の予告編でもこの曲が使われていたから。

で、先週はその「都会のアリス」を早稲田松竹に見に行った。偶然だろうけど、同じ曲が使われているまったく関係ない映画が2週連続でかかるってこともそうそうないと思う。キャンド・ヒートが流れるジュークボックスに、子供がもたれかかるようにして立っている。

ジュークボックスで好きな曲を1曲だけ買う、そしてそれを聴く、あるいはそれを踊る、のは、当然のことながらわたしの(ほぼ)知らない文化なんだけど、どういう気分なんだろう、あれは。などということは、このあいだ、ジュリアン・デュヴィヴィエ「めんどりの肉」でも思ったことだった。なにしろ、豪雨でまいってしまってドライヴ・イン的な食堂にたどり着いたカップルの女が、いきなりジュークボックスにコインを投入して踊りだすのだから(記憶違いかも)。もしかすると現代だと、気に入った曲を1曲だけ配信で買うような行為がそれにあたるのかも……(違うかも)

しかし、「都会のアリス」でいちばん不思議なのは、わざわざ「海外ロケ」してあのような地味な映画を作ってしまうドイツ映画界の体質というか雰囲気というか空気というかで、70年代半ばに日本映画が欧米ロケするとしたら、どうしたって、日本映画界を代表して……みたいな、気合いと気負いの充満したものになるのが普通だったろう。

74年ごろの対ドル為替レートを調べてみたら、まあおおざっぱに300円前後、といったところ。では西独マルクとドルの関係はどうだったか、と調べ始めてみたけれど、マルクをドルに替えて映画を撮るのがどういうことか、を分かるためには、当時のドイツの物価も調べなくてはならなくて、さすがにそれは面倒なのでそこまではしていない。

当時の西ドイツからアメリカの心理的な距離もそれなりに遠かっただろうけど、日本とアメリカとの「遠さ」とは、もうぜんぜん種類が違うなあ、と、へんなところに感心。
by soundofmusic | 2008-10-26 20:16 | 日記


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